クセの強い悪役たち


物語のアクセントになっているのが、ある意味2人の仲をはばむ、さまざまな悪役たち。
まず、冴の母・静(富田靖子)はものすごい毒親です。過去に冴の父親に捨てられた反動か、高校生の冴に「女の子は勉強なんてせずに男の人に幸せにしてもらえばいい」「重要なのは男の選択」というような考えを押し付け、冴を自分のそばに置こうとします。冴にも付き合っている男にも依存気味で、冴が母から離れるためにせっせとアルバイトして溜めたお金を自分の彼氏にあげてしまいます(最低すぎる……)。

 

冴が正樹に寄り添うところが盗撮された際は学校に乗り込み、冴の小説を読み上げる・職員室で大声を出すなどの騒ぎを起こし、数年経っても家を出た冴の居所を突き止めてやってきたり、謎の大金を持っていて男に追われていたりと何かとあやしすぎます。富田靖子さん、かわいいイメージでしたがこの役はすごい……。

そして正樹の教師時代の同僚だった愛菜美(比嘉愛未)もすごい。教師時代は地味で冴えない暗い女性でしたが、数年後は小説家となり見た目も洗練され、なんと正樹の妻となって冴の前に現れます。自分が条件なしに人から愛されるわけがないと思っており、裏で手をまわして正樹が自分から離れられないようにするなどかなり裏のある人物。小説家を目指す冴にわざと近づき、親切な振りをして影であざ笑ったり、審査員として参加していた賞の選考に冴の小説が残るのを見て、原稿を持ち帰って捨てたり……とかなり悪質。何より、正樹が学校を辞めねばならなくなる原因となった隠し撮りは、愛菜美が撮ってインターネットにアップしたものでした。正樹に離婚しようと言われても拒んでいた彼女が、8話で見せた表情は印象的でした。

比嘉愛未さん、どちらかというとキラキラした勝ち組女子を演じてきたイメージがあるので意外な役だなと思いましたが、演技力の幅を見せつけてくれました。昨年主演した『にぶんのいち夫婦』でのキレたときの演技も活かされている気がします。

愛菜美の父親で、正樹の働く会社の社長である碓井賢治(光石研)も怖い。成功しお金を得るためならどんな汚い手段でも使い、人のことを人と思わない冷酷さを持った人物で、家族ですらも自分に都合よく動かすための駒と考えているように思えます。光石研さんは今までさまざまな父親役を演じてきたのは知っているのですが、同じ木曜21時に放送されている『六本木クラス』では本当に優しくて息子思いないい父親を演じていたので、同じ人がこうも人相の違う人物を演じられるのか……! と、あらためて驚いてしまいます。