1日5時間のシフトを週5に増やしたあたりから、同僚との信頼関係がぐっと深くなったという亜弥さん。家庭の状況を正直に相談したことで、皆が親身にアドバイスをしてくれたと言います。

「結婚式に出てくれたような学生時代の友達には、毎日会えるわけではなく、夫婦仲が良くないことを少し言いづらかった。ちょうど30歳過ぎで、みんな結婚ラッシュでしたし……正直に言えば順風満帆な友人に劣等感のようなものを感じていました。

でもそこで1人で抱え込みすぎず、私の場合は、毎日顔を合わせる同僚やママ友に心を開けたことがよかったなと思います。『彼とは離婚したほうが毎日笑って暮らせる気がするんだけど、どう思う?』『月収28万円だとして、やっていけるかな?』とか、客観的な意見をきいていました」

上司の勧めもあり、介護福祉士の資格取得を目指して受付業務からポジションを変え、少しずつ準備をしていきます。体力的にはもっと楽な仕事も割のいい仕事もありましたが、長い目で見て稼げるようになるために、コツコツと経験を積みました。

パートを始めた時点では、元夫に「お前にできる仕事なんかない」という心無い言葉に洗脳され、自信がなかったという亜弥さん。しかし、多少無理をしてでも新しい環境に飛び込んでみたことで、少しずつ夫以外の人と接する時間が増え、ささいなことでも褒められて、自分の強みや得意、何よりも明るい思考を思い出したそう。夫婦の関係に煮詰まったときは、他のことに目を向けたり、取り組んでみたりすることでヒントを掴む可能性もあるようです。

 

そして3年後、亜弥さんに離婚を決意させる出来事が起こります。 

 

「その頃から、少しずつ夫の長男への当たりが厳しくなっていました。下の2人に対しては、どちらかというと無関心でしたが、小学校高学年の長男には癇癪を起して手を上げることが増えてきて……。ある日、ささいなことで腕にアザが残るほど殴ったので、私も猛抗議し、そのまま長男と病院へ。写真を撮ってもらい、いざというときの証拠にしました。

長男にだけ厳しく、理由も機嫌次第、しつけというには理不尽です。何より、子どもたちが激高する父親を見てびくびくしている。一緒に生活すると、笑顔が消えてしまうのが辛かった」

離婚してほしい、と亜弥さんが切り出すと、夫はせせら笑ったといいます。

「お前、明日からどうやって生活すんの? パートったって十数万だろ」

しかしその頃には亜弥さんは介護福祉士の資格も取得し、シフトをたくさんいれていて、ギリギリ生活できる算段が立っていました。それも綿密な計算をした結果のことです。貯金も、1カ月に数万円でしたが続けていました。

話合いは平行線をたどり、ついに亜弥さん夫婦と、双方のご両親を交えて6者会談となります。