作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。その赤裸々な声は、まさに「事実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の夫婦問題を浮き彫りにします。
今回検証するのは、8歳年下の外国籍の男性と「略奪され婚」、つまり不倫から結婚に至った稀有な例。ところが10年の結婚生活を経て、再び離婚することになった42歳の女性を徹底取材。小さなお子さんを連れて、バツ2のシングルマザーとなった彼女のお話を通して、夫婦という制度のひずみを検証します。
職業:在宅ワーク中心の英文事務
家族構成:幼い娘と2人暮らし。元夫(アメリカ人、34歳)とは2ヵ月前に離婚成立。
1度目の離婚理由は、駐在中にまさかの……
「1回目の結婚は、24歳の時。大学時代の同級生と結婚しました。学生時代の恋そのまま、平和な結婚です。長く付き合っていたので気心も知れていて、結婚生活も順調。私は英文事務職で正社員として勤めていたので、仕事を続け、30歳過ぎに子どもを産めたらと思っていました。でもあっさり、その予定は変わってしまいます」
同級生の夫は商社に就職していましたが、29歳で転勤に。場所はタイのバンコク。冴子さんは仕事を辞めて帯同します。最初は心躍る駐在生活を送っていた冴子さん。しかし、次第に夫婦関係にひずみが生じます。
「人は、稼ぐようになり、環境が変わるとこれほど人格が変わることがあるんだ、と驚きました。彼のことは友達から始まり、19歳から知っていたから、余計に『商社の駐在員という立場で偉そうにする彼』に違和感があったのかも。タイ人ハウスキーパーに横柄に当たったり、玄関のドアさえ自分で開けず、ドライバーに開けさせたり。私に対しても、『駐妻っていい身分だよなあ、こっちは苦労してるのに。感謝しろよ』と毎日のように言いました」
なじられる毎日、冴子さんは何か建設的なことをしたいと考え、得意の英語を伸ばすべくビジネス英語と日常タイ語の教室に通い始めます。そこで、出会ったのが「二人目の夫」でした。
「彼はアメリカ人で、英会話の講師でした。言い訳はしません。不倫は、誰も幸せになりません。そしていつか報いを受ける。でも、当時は頭でそれがわかっているのに、ストレートに好意を伝えられ、一緒に過ごすうちにとても好きになってしまいました」
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