肉体的な衰えに抗えない現実に直面して、湧いてきた思い
――手術のこともそうですし、40歳という年齢はご自身と向き合う機会の多かった1年だったのではないでしょうか。歩さんがヘアヌード写真集『歩りえこ 1st写真集 スフィア』を出されたのも40歳ですよね。
歩 そうですね。じつは、大好きだった祖母が98歳で亡くなったのも昨年で、私が40歳の時だったんです。本当に色々あった1年でした。
――それはおつらい出来事でしたね……。
歩 ただ、祖母の死は写真集を決意するうえで、ひとつの大きなきっかけでもあったんです。身内を褒めて恐縮なんですけど、とても美しい祖母だったんですね。でも最期は、肌の色も変わり果てて、脚はまるで枯れ枝のようでした。人間は誰しも肉体的な衰えには抗えないし、それは祖母だけに起こった特別なことじゃない。私にも起こり得ることだ。そう考えたら、自分の「肉体」に対する固定観念が変化していくのを感じたんです。
歩 ヌード写真集のお話は30代の時に一度いただいたことがあったんですけど、コンプレックスだらけで「とても人様にお見せできるものじゃない」とお断りしたんです。でも、この40歳の肉体は今だけのもの。出産して年齢も重ねたけれど、ありのままの姿を残しておいてもいいんじゃないか。祖母の死をきっかけにそうした思いがふつふつと湧いてきて。そんな時、偶然今回の写真集のお話をいただいたので「ぜひお受けさせてください」と即答したんです。
――大きなインパクトのある出来事がきっかけだったとはいえ、撮影にあたって不安になることはありませんでしたか。
歩 リスクを数えだしたらキリがないので、自分の直感を信じて、不安になることはあまり考えないようにしました。もし失敗しても、それはそれで自分の未熟な部分に気づくことができますし、未熟さを補うために学び直すこともできますから。20代での世界一人旅も、首締め強盗や集団痴漢に遭って恐怖で震え上がったこともあったけれど、それにもまして素晴らしい経験ができたのは「失敗してもいい」と思って行動できたからこそ。そもそも、旅も人生もハプニングやリスクはつきものですしね。
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