世界中から素材を集めた衣装の数は約5000着
「鉄の玉座に女が座るのを見るくらいなら、王国を燃やした方がいい」。劇中ではこんな台詞が横行します。古い家父長制を打ち破っていく話こそ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』のメインテーマです。
ただし、そうは簡単にいきません。王女レイニラをはじめ、悔しい想いを抱える女性たちばかりです。そして、女性の仕事は出産であることが繰り返されていきます。まるで戦場のように苦痛な王妃の出産シーンから印象づけ、難産を呪って自ら火あぶりの死を選ぶ妃もいます。
目を覆いたくなるような痛々しいシーンはゲースロと同様に多めですが、決していたずらに作られているわけではないのです。報復を意味していることが否応なしにわかるため、やりきれなさが残り、これがゲースロシリーズ沼にハマらせます。
またディテールに拘った作りも、ゲースロシリーズの醍醐味です。この作品のために900種類以上のコスチュームがデザインされ、世界中から集めたコットン、シルク、ベルベット、レザー、シフォンなどの素材を使って、製作されたその数は約5000着に上ります。専用の作業場にはかつら職人が作ったプラチナ・ブロンドのかつらが何百個も並んでいたそうです。
中世ヨーロッパの史実からインスパイアされた世界観はロケーションからも納得できます。劇中で登場する港町のペントスは、スペイン南部のグラナダに中世からあるラ・カラホラ城で撮影されています。ちなみに、スペインでも撮影された作品とあって、首都マドリードの街中には今、ターガリエン家の紋章を立体的に象った『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の巨大看板が置かれています。
作品に対する熱気は、今はまだ欧米が中心とも言えますが、シーズン2の制作が早くも決定しています。「冬来たる」に至るまで続いていくのか。見届けていく価値アリです。
構成/山崎 恵
前回記事「『ロード・オブ・ザ・リング』新作は、圧倒的映像美に凛とした女性たちの魅力が光る!」はこちら>>
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