3月8日「国際女性デー」に合わせて観たいエンタメ作品を、あらゆるジャンルに精通するプロの視点でセレクト! 今回紹介する『セイント・フランシス』の、単なる“孤独や問題を抱えた女性と少女の物語”にとどまらない凄さとは? 映画ライターの渥美志保さんが解説します!
国や民族、言語、文化、政治といったあらゆる違いを超えて、これまで女性たちが達成してきた成果を讃える日です。
発端は1908年、米・ニューヨークの女性労働者が起こした待遇の改善を求めるストライキ。これを機に、女性の権利や政治的・経済的な社会参加を求める動きがヨーロッパ全域へと広がっていきます。決定打となったのは1917年、第一次大戦下のロシアで起こった「二月革命」です。女性たちの“パンと平和”を求める抗議は、男性たちや兵士らをも巻き込んだ民主革命へと発展します。結果、ロシア皇帝による帝政は崩壊。暫定政府は女性の選挙権を認めました。
この二月革命が起きたのが3月8日(当時のロシアではユリウス暦2月23日)でした。国際婦人年である1975年に、国連はこの日を「国際女性デー」とすることを発唱。77年に制定されました。
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『セイント・フランシス』
34歳未婚のブリジットは、学歴もパッとしないしお金も持っていません。レストランの給仕係として働いていますが、とりあえずこの仕事を辞めたくて求職中。ようやく見つけたのが夏休み限定のベビーシッターの仕事。お相手はリッチなレズビアンカップルの娘、小学校入学前の6歳のフランシスです。物語はこのブリジットとフランシスが共に過ごした夏休みを描いてゆきます。
見どころは何といっても、ワル知恵が回るきかん坊のフランシスのキャラクターです。公園に遊びに行くのに「乳母車には乗りたくない! 歩ける!」と言い張ったその舌の根も乾かぬうちに、疲れた〜おんぶ〜! と言い出すわ、ちょっと目を話せばブリジットの鞄をあさってタンポンを分解するわ、誘拐された‼︎ と大騒ぎして警察のお世話になるわ……というクソガキぶり。「世の中の常識なんてお構いなし!」という自由奔放な女の子です。
当然ながらブリジットはぶんぶん振り回されるわけですが、仕方ない……と思って付き合っているうちに、だんだん波長が合ってくる。ブリジットは何かといえば「いい年こいて……」と「ダメな大人認定」されがちなタイプなんですが、フランシスは彼女をそんな風には扱いません。
なぜかといえば、これまでフランシスについてきたベビーシッターは、彼女をただの「やんちゃなクソガキ」として扱っていたけれど、ブリジットはその裏にある孤独や不満を理解してくれるから。ブリジットのほうもそんなフランシスとの関係を通じて、エネルギーと自由な魂を取り戻してゆきます。
ここまでであればよくある映画なのですが、作品の最大の特徴はブリジットがこの仕事を引き受ける前に、初めて会った年下男と関係して妊娠、さらに中絶していることです。
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