3月8日「国際女性デー」に合わせて観たいエンタメ作品を、あらゆるジャンルに精通するプロの視点でセレクト! 2022年公開の『ザリガニの鳴くところ』は、世界的ヒットとなった原作小説に感銘を受けたテイラー・スウィフトが自ら志願し、楽曲提供したことでも話題になりました。そんな注目作の見どころを、映画ライターの渥美志保さんが解説します!
国や民族、言語、文化、政治といったあらゆる違いを超えて、これまで女性たちが達成してきた成果を讃える日です。
発端は1908年、米・ニューヨークの女性労働者が起こした待遇の改善を求めるストライキ。これを機に、女性の権利や政治的・経済的な社会参加を求める動きがヨーロッパ全域へと広がっていきます。決定打となったのは1917年、第一次大戦下のロシアで起こった「二月革命」です。女性たちの“パンと平和”を求める抗議は、男性たちや兵士らをも巻き込んだ民主革命へと発展します。結果、ロシア皇帝による帝政は崩壊。暫定政府は女性の選挙権を認めました。
この二月革命が起きたのが3月8日(当時のロシアではユリウス暦2月23日)でした。国際婦人年である1975年に、国連はこの日を「国際女性デー」とすることを発唱。77年に制定されました。
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『ザリガニの鳴くところ』
『ザリガニの鳴くところ』はノースカロライナの湿地帯を舞台に、そこで生まれ育った少女の成長を描いた作品です。ハリウッドきってのフェミニスト、リース・ウィザースプーンが製作に乗り出した、これこそ今を生きる女性に見てほしい作品! と思うのですが、今ひとつ本質が理解されていない感じ……ということで、今回はその肝のところをビシッと解説したいと思います。
舞台は1960年代。主人公のカイアは町の外れに広がる湿地帯に生まれ、たった一人で生きている少女です。かつてその場所で家族たちと一緒に暮らしていたのですが、暴力的な父親を捨てて母親が去り、3人の兄姉も順番に去り、最後に残った父親が姿を消して、ほんの小学生くらいの頃に彼女は一人ぼっちになりました。
生まれ育った湿地と、そこで生きるすべしか知らない彼女は、いつしか湿地でとれるものを売って生活するようになります。学校にも通わず、いつもボロボロの格好の彼女を、町の人々は「湿地の少女」と呼んで蔑みます。
そんな彼女を気にかけてくれる唯一の存在は、兄の友達で、幼いころから湿地で一緒に遊んでいたテイト。彼はカイアに文字の読み書きを教え、彼女が描いた湿地の生物の絵を「出版社に送るべき」と励まし、そうするうちに二人は恋に落ちてゆきます。大学進学を決めたテイトは彼女とともにこの場所を出ようと試みますが、親の反対にあい、結局は彼女を置いて去ってゆきます。
再び孤独になったカイアは、数年後、湿地で起きたある殺人事件の容疑者となってしまいます。被害者は町の名士の傲慢な放蕩息子チェイス。何を思ったかカイアに興味をもっていた様子で、「湿地の少女」は町の住人たちの偏見によって容疑者に仕立てられてしまいます。
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