生き方に選択肢があれば全部試してみる


──不安を感じるのが余裕のある状態だとしたら、いくつか選択肢があることも不安をあおっているのかもしれませんね。坂東さんの場合ですと、「転職しない」という選択肢もあったと思いますが……。

選択肢があるのはまだ生き方を選んでいない状態ですよね。現実には二つ三つと選べるはずがない。一つしか選べなくて、それをやるよりほかないと思っています。これにしようかどうしようかと迷っているのは、生き方が定まっていない状態。不安を感じる以前の問題ではないでしょうか。

──では、生き方にいくつか選択肢があって、何に重点を置いて選んでいいかわからない場合はどうすればいいのでしょう?

そんな状態になってしまうのは、一歩踏み出すのが怖いからだと思います。自分に自信がないんですね。でも、選ぶ秘訣なんてないんです。選択肢がいくつかあれば全部試してみて、その中で自分に一番合っているものを選ぶ。それ以外やりようがないと思います。とにかく、考え込まずに行動することが大事ですね。

自分を「大事にする」ことと「居直る」ことは別もの。坂東眞理子さんに聞く、50歳以降の心の持ち方_img0
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50歳以降の生き方を決める前にスマホ断ちを


──『女性の覚悟』(以下、本書)では、50歳以降の生き方を決める前に、それまでの人生を振り返って自分の強みや本当にやりたいことを見つけることを薦めています。そのためには、パソコンやスマホからの情報を断つようにと書かれていますが、そこに恐怖を覚える人は多いのではないでしょうか。

 

永遠に断つわけではなくて、せいぜい2~3週間、長くて1ヵ月くらいと考えてもらえばいいと思います。なぜ情報断ちが必要かというと、他人の成功話に惑わされないためです。これからの生き方を決めるときは、「人は人、自分は自分」と分けて考えることが重要。そのためにも、こうしたらいい、ああしたらいいという他人からの情報は遮断した方がいいと思います。そもそも他人の成功体験なんて真似できるはずがないんです。自分とは状況がまったく違いますから。

──冷静に考えるとその通りですね。ちなみに、坂東さんはSNSをご覧になりますか?

ほとんど見ませんし、発信もしません。美味しいレストランに行ったとか、誕生日にお祝いしてもらったとか。他人からそういう幸せそうな写真を見せられると、自分はなんて冴えないんだろうと思うことはありますが、人間って自分が見せたくないものは他人に見せないし、SNSにだってアップしませんよね。SNSで幸せそうに見える人も、現実での生活を見てみたら愕然としているかもしれない。裏でどれだけ一生懸命やっているか、どれだけ苦労しているかを見ないで、この人いいな、素敵だなと思い、一方で自分は冴えないと劣等感を抱くのは精神衛生上良くないですよね。