「『ロックリング』はその名の通り、石をそのまま身に付けているような感覚をデザインしました。これは実はとても贅沢な使い方で、ころんとした感じを出すために、石を大きく使っているんです。大きい石に仕上げた時にクラックが出ないように、それを避けながら、しかもより美しいところをこのボリューム感で取ってもらうというのも、本当に骨が折れる、とても大変な作業なんです」。
それは、研磨の前に行われる『石取り』という作業。「その石の最高に美しい部分を切り取っていくんです。クラックなどを避けながら、石の表情をより豊かに見せるためには、どちらの方向から削っていくか、どこら辺をどう使うかと目星をつけながら、あらゆる方向を見ながら見極めていくのですが、それは熟練の職人さんでも時間のかかる、根気のいる作業なんですよ」と赤地さん。
その作業は、ジュエリーとしての石の表情や存在感を運命づけるもの。だからうまく取れた時には、『今回のはいいよ』って職人さんから連絡があることもあるのだそう。
そもそも、まだbororoとしてジュエリーを作る前、とある石の加工をお願いすることになり、そのきっかけで詫間さんと知り合った赤地さん。その完璧な仕上がりに驚いて、「こんなことを実現してもらえるなら、じゃ、こういうこともお願いできますか?」とやりとりを重ねながらbororoのジュエリーが生まれたそうです。
「ロックリングを思いついた時に、そのラフスケッチを詫間さんに見てもらったら、『そんなの無理』と当初は言われてしまったんです。『そこをなんとか!』というところからスタートしたんですよ(笑)。手先の感覚で行われる同摺りの作業がまさにそうで、大きなリングでも大変なのに、ロックピアスはもっともっと小さいので、本当に職人さん泣かせなお願いをしているんです」。
それでも、いつだって詫間さんたちは見事に仕上げてくれる。「いっぺんにたくさん送られてもできないよ」と言われているそうですが、そんなやりとりにもどこか愛を感じました。
初めてアトリエを訪れた時に選んだリングも、それから半年近くの時を経て、もはや私にとっては相棒のような存在です。PCに向き合っている時、車の運転をしている時……、ふと視界に入ると、吸い込まれそうな淡いグリーンにハッとさせられたり、和んだり、時には一瞬だけ遠いところに連れて行ってもらったり……。手先にモダンな空気感を添えてくれつつ、安らぎをもたらしてくれます。まるで小さなパワースポットのように!
異国の大地の奥深くで悠久の時とともに育まれた天然石を、旅するように探し求める赤地さん。そして、その石は、山梨県の職人さんの見事な手の技を経て、モダンでどこか都会的なbororoのジュエリーとして新たなる生を得るーーー。
石そのものの強さもそうですが、それをさらに昇華させるデザインと、それを実現する見事な職人技。そのすべてを受け止め、体現したbororoのジュエリーに特別な魅力を感じるのは、自然の理にかなったことなのかもしれない、改めてそんなことを考えました。
ものづくりの背景を知って、愛しさがさらに増したbororoのリング。思いつきのように、ふとしたことをきっかけに私の元にやってきたリングは、聞けば聞くほどエネルギッシュで、もはや私にとってもスペシャルなアイテムです。お守りのように携えながら、これからもともに毎日を過ごしていきたいと思います。
2回にわたってお伝えしたbororoのジュエリー、いかがでしたか。次回は、日本に上陸してはや13年目となるロンハーマンを訪れる予定です。そのセレクトを一挙に任されているバイヤーさん、ヒットを生み続けているデザイナーの方にお話を伺いたいと思っています。どうぞお楽しみに。
(手前)赤地明子さん:ニューヨークにて宝石学を学んだ後、美しい宝石を求めて世界中を旅する。コロンビア、ブラジル、ドイツ、タンザニア、スリランカ、タイなど世界各地の宝石産地や市場に独自のコネクションを持つ。Instagram:@bororo_official
(奥)松井陽子(まついようこ):エディター&ライターとして、雑誌やカタログなどで活躍中。湘南在住。家族は藍染師の夫と、20代2人、10歳の子と猫。mi-molletで月に2回アップされる「スタッフの今日のコーデ」も人気。Instagram: @yoko_matsui_0628
撮影/目黒智子
構成・文/松井陽子
編集/朏 亜希子(mi-mollet編集部)
撮影協力/bororo
前回記事「スローンの名品Tシャツは、リーバイスのデニムと同じ。私のスタイルの定番に」はこちら>>
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