「『ロックリング』はその名の通り、石をそのまま身に付けているような感覚をデザインしました。これは実はとても贅沢な使い方で、ころんとした感じを出すために、石を大きく使っているんです。大きい石に仕上げた時にクラックが出ないように、それを避けながら、しかもより美しいところをこのボリューム感で取ってもらうというのも、本当に骨が折れる、とても大変な作業なんです」。

それは、研磨の前に行われる『石取り』という作業。「その石の最高に美しい部分を切り取っていくんです。クラックなどを避けながら、石の表情をより豊かに見せるためには、どちらの方向から削っていくか、どこら辺をどう使うかと目星をつけながら、あらゆる方向を見ながら見極めていくのですが、それは熟練の職人さんでも時間のかかる、根気のいる作業なんですよ」と赤地さん。

その作業は、ジュエリーとしての石の表情や存在感を運命づけるもの。だからうまく取れた時には、『今回のはいいよ』って職人さんから連絡があることもあるのだそう。

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「天然石の宇宙を覗く」というbororoのコンセプトが見て取れる、ロックリングのシリーズ。石の内包物が際立つデザインで、それぞれの表情についつい見惚れてしまいます。

そもそも、まだbororoとしてジュエリーを作る前、とある石の加工をお願いすることになり、そのきっかけで詫間さんと知り合った赤地さん。その完璧な仕上がりに驚いて、「こんなことを実現してもらえるなら、じゃ、こういうこともお願いできますか?」とやりとりを重ねながらbororoのジュエリーが生まれたそうです。

 

「ロックリングを思いついた時に、そのラフスケッチを詫間さんに見てもらったら、『そんなの無理』と当初は言われてしまったんです。『そこをなんとか!』というところからスタートしたんですよ(笑)。手先の感覚で行われる同摺りの作業がまさにそうで、大きなリングでも大変なのに、ロックピアスはもっともっと小さいので、本当に職人さん泣かせなお願いをしているんです」。

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bororoのピアス。こんな小さなピアスにも完璧と言えるほどの滑らかな同摺りの技術が。ボリューム感のある石が地金の下に設定されているので、光がまわりやすく、天然石の色そのものが楽しめるデザイン。どこか有機的な佇まいが、顔まわりに自然と視線を集めてくれます。(上段、左)ピアス(ペア)<ターコイズ>¥143000、(上段右)ピアス(ペア)<ルチルクオーツ>¥124300、(下段)ピアス(ペア)<タンザナイト>¥232000

それでも、いつだって詫間さんたちは見事に仕上げてくれる。「いっぺんにたくさん送られてもできないよ」と言われているそうですが、そんなやりとりにもどこか愛を感じました。

初めてアトリエを訪れた時に選んだリングも、それから半年近くの時を経て、もはや私にとっては相棒のような存在です。PCに向き合っている時、車の運転をしている時……、ふと視界に入ると、吸い込まれそうな淡いグリーンにハッとさせられたり、和んだり、時には一瞬だけ遠いところに連れて行ってもらったり……。手先にモダンな空気感を添えてくれつつ、安らぎをもたらしてくれます。まるで小さなパワースポットのように! 

異国の大地の奥深くで悠久の時とともに育まれた天然石を、旅するように探し求める赤地さん。そして、その石は、山梨県の職人さんの見事な手の技を経て、モダンでどこか都会的なbororoのジュエリーとして新たなる生を得るーーー。

石そのものの強さもそうですが、それをさらに昇華させるデザインと、それを実現する見事な職人技。そのすべてを受け止め、体現したbororoのジュエリーに特別な魅力を感じるのは、自然の理にかなったことなのかもしれない、改めてそんなことを考えました。

ものづくりの背景を知って、愛しさがさらに増したbororoのリング。思いつきのように、ふとしたことをきっかけに私の元にやってきたリングは、聞けば聞くほどエネルギッシュで、もはや私にとってもスペシャルなアイテムです。お守りのように携えながら、これからもともに毎日を過ごしていきたいと思います。


2回にわたってお伝えしたbororoのジュエリー、いかがでしたか。次回は、日本に上陸してはや13年目となるロンハーマンを訪れる予定です。そのセレクトを一挙に任されているバイヤーさん、ヒットを生み続けているデザイナーの方にお話を伺いたいと思っています。どうぞお楽しみに。

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(手前)赤地明子さん:ニューヨークにて宝石学を学んだ後、美しい宝石を求めて世界中を旅する。コロンビア、ブラジル、ドイツ、タンザニア、スリランカ、タイなど世界各地の宝石産地や市場に独自のコネクションを持つ。Instagram:@bororo_official

(奥)松井陽子(まついようこ):エディター&ライターとして、雑誌やカタログなどで活躍中。湘南在住。家族は藍染師の夫と、20代2人、10歳の子と猫。mi-molletで月に2回アップされる「スタッフの今日のコーデ」も人気。Instagram: @yoko_matsui_0628


撮影/目黒智子
構成・文/松井陽子
編集/朏 亜希子(mi-mollet編集部)
撮影協力/bororo
 

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前回記事「スローンの名品Tシャツは、リーバイスのデニムと同じ。私のスタイルの定番に」はこちら>>

 
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