国葬の是非も大きな議論を巻き起こした、安倍晋三元首相の襲撃事件。事件をきっかけに旧統一教会関連のニュースが盛んとなる中、今注目を集めるキーワード「カルト」を深掘り! 社会派ライターの渥美志保とバタやんの“アツバタ”コンビがお送りしてきた連載「ニュースな言葉」、今回はミモレ編集部の坂口がジョイン。旧統一教会の問題に40年ほど前から取り組んできたジャーナリスト・有田芳生さんに、そもそも「カルト」とは何なのか、「カルト」はどのように近づいてくるのか、どうすれば「カルト」の被害に遭わずに済むのか、について聞いてみました。前回に続き、第二回目です。
ターゲットになる人と、新しい勧誘方法
坂口:さて前回は「カルトの怖さ」みたいなものを教えていただきましたが、怖いけど、私は大丈夫、と思った方も多かったんじゃないでしょうか。
アツミ:でも、実は統一教会の信者の8割は女性らしいです。そして「統一教会=霊感商法」と知っていても、「知らないうちに入り口に立っていた」という人も多いとか。狙われやすい人は「ギン・カン・ポ・アパ・キンジョ」っていうらしいです。
坂口:「ギン・カン・ポ・アパ・キンジョ」? それってなんですか、有田さん。
有田芳生さん(以下、有田):「銀行員」「看護師」「保母」「アパート一人暮らし」「勤労女性」。30年前から言われてることなんですが、今もさほど変わっていないと思います。かつては働いている若い女性といえば、看護師と保母さんが多かったんですよね。つまりお金を持っている女性が狙われてきた、ということ。加えて最近では、中年以上の既婚女性に対する勧誘が増えています。統一教会では「壮婦」と呼ばれています。
アツミ:それはどうしてなんですか?
有田:働いている若い世代より、蓄えた財産を持っているからです。
坂口:しかもその世代の日本女性って「主張せず従順に」とか「人の好意を無にするな」とか、共感ベースで育てられきた方も多いですもんね……。
有田:これはオウム真理教の元信者にも共通していますが、信者には素直でマジメで「反抗期がなかった」というような人が多いんですよね。物事を批判的に見るよりも、素直に信じてしまう傾向が強いというか。
’90年代に入信した山崎浩子さんに脱会後に何度も話を伺ったんですが、入信前は「合同結婚式に参加する人の気が知れない」と思っていたらしいです。ところが海外遠征中にお父様が亡くなり、最も落ち込んでいた時に一番優しく接してくれたのが統一教会の信者だった。「この人たちが言うなら」と勧められるままに勉強し、入信し、最終的には合同結婚式に出ています。辛い時に優しく近づいてきて、諦めずに声をかけてくれた。それが「たまたま信者」だったと。きっかけはそれぞれでしょうが、彼女のようなパターンは多いですね。そういう方法はマニュアルとして体系的に確立されていて、それがオウムなどよりも恐ろしいところだと思います。
有田芳生さん1952年京都府生まれ。ジャーナリスト。出版社勤務を経てフリージャーナリストとして活躍。主に週刊誌を舞台に、統一教会、オウム真理教事件等の報道にたずさわる。2007年まで日本テレビ系「ザ・ワイド」に出演。2010年に民主党から立候補し参議院議員となり、拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題などに積極的にとりくむ。