法律はカルトを規制し被害者を救うことができるのか?


アツミ:今、統一教会の被害者救済のための法律を作ろうとしているじゃないですか。それでフランスの「反セクト法(カルト法)」についても調べてみたんです。そうしたら「統一教会」をはじめ、「エホバの証人」「サイエントロジー」「霊友会」など、日本では一般的な宗教法人として普通に認知されているものも、「カルト」と認定されているんですね。

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写真/Shutterstock

※反セクト法(セクト規制法)
団体の指導者が刑事上の有罪判決を複数回受けた場合、司法が解散宣告できるという法律。

有田:今は外れていますが、かつては創価学会も認定されていたんですよ。反セクト法はオウム真理教の地下鉄サリン事件を受けて、カルト対策として作られた法律です。10項目のチェックで、宗教を含む約180の団体がセクト認定されています。でも「反セクト法」ができて21年たっても、それによって規制されたり、解散させられたりした団体っていうのはひとつもないんですよ。だから日本で法律を作るにしても、もっと実効性のあるものが必要だと思うんですね。

アツミ:有田さん、どうしたらいいと思いますか?

有田:難しいんですよねえ。統一教会についていえば、まず過度な献金ができなくなるという法律を作る必要があって。立憲と維新が共同で提出した法案がありますが、僕の判断からすると「マインドコントロール」という俗語に囚われすぎている。政府案もふくめて被害実態が前提です。

アツミ:政府与党案のほうも、ずいぶん「やんわり」しちゃってる印象がありますよね。「マインドコントロール」の前提が削られているし、高額献金の定義もなぜか「借り入れと、建物などの売却」に限られていて。「自由意志で」と念書を書き、例えば田んぼとかの形で献金した場合、全然規制の対象にならないって、紀藤弁護士が怒っているのみました。

有田:まあどちらにしろ実効性のある法律として成立するとは思えません。政局的判断が前面に出すぎています。臨時国会が終わっても来年1月には通常国会がある。被害救済の実効性のある法律にするのが重要であって、慌てることはありません。

アツミ:どうすればいいんですか、有田さん!!

有田:あと「宗教法人格のはく奪」では、みなさんが思うほどは大した変化はおこらないんです。任意団体としての教会も、教義もそのまま残りますし、信者たちの行動も今までと変わらない。韓国への送金も、「個人が直接持っていく現金」は止められませんし。

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根本的には、日本の統一教会が韓国の統一教会にお金を払うことのない、独立した組織にならないとダメです。でもそうなるのは難しいですよね。まあ、まずは宗教法人格をはく奪した上で、オウム対策2法(団体規制法と被害者救済法)のように、定期的に公安調査庁が調査に入る、そういう強制力がないとダメだと思います。