「子どもの声がうるさい」という、たった一軒の苦情がきっかけで、市が公園を廃止したという話が波紋を呼んでいます。あくまで一般論ですが、行政組織がひとつの苦情を受けただけで、公共施設の廃止や存続を決めるというのは考えづらいことです。ネットでは、住民を特定してバッシングするような動きも見られるようですが、本当のところは住民以外には分かりようがありません。個人を攻撃するようなことは絶対にやめるべきですし、社会としても許容すべきではないでしょう。
長野市では、市が管理する公園について2023年3月に公園を廃止することを決定しました。ところが、「子供の声がうるさい」という近隣住民1軒からの苦情が廃止の理由だったとの話が拡散し、全国的に波紋を呼ぶことになりました。ネットでは「たった1人のクレーマーの言うことが通るおかしな世の中」「子供の声がうるさいなど、人として悲しすぎる」「日本人はなぜこんなにわがままになったのか?」など、もっともらしい意見が多数飛び交っていたようです。
しかしながら、こうした情緒的で分かりやすい話には要注意です。
この件は、100%状況が明らかになっているわけではありませんから、現時点での推定になりますが、冒頭にも記したように、多くの手続きが必要となる行政組織において、1件の苦情が来たという理由だけで、いきなり公共施設を廃止するのは考えにくいことです。
この問題は市議会でも取り上げられており、市側は「直接意見をもらったのは1軒」としながらも、利用者が多く、大きな声が発生する状況になっていたことや、迎えに来る親の車で公園の周辺が混み合っていたことなど、住民の苦情については理解できるという見解を示しています。
この話をそのまま受け取れば、苦情は1軒だったが、市が全体の状況を総合的に判断した結果、廃止を決断したと解釈できますから、クレーマーの無茶な意見が通ったという話とは少し違うように見えます。
一方で市議会では、「公園は廃止ありきだったのではないか」といった議論も出ているようです。もともと廃止を検討していたところに、住民から苦情が来たことから、市側がそれをうまく利用したという話です。もしそうであれば、苦情を言った住民は、無意味に世の中からの批判にさらされたことになります。
可能性は低いと思いますが、非常識なクレームを付けた住民を面倒に感じて、市側がいきなり廃止を決めたということも考えられます。もしそうであれば、クレームの内容はともかく、安易に受け入れた市側に問題があるという話になるでしょう。
近年、保育園の子供の声がうるさい、お寺の鐘の音がうるさい、盆踊りがうるさいなど、地域の施設やイベントに対して苦情が出るケースがよく話題になっています。多くの人は、こうした情報に触れて、テレビのコメンテーターさながらに「最近の社会はおかしくなっている」など、もっともらしい主張をするのですが、本当に非常識なクレームが増えたのかどうかは、当該情報からだけでは分かりません。
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