セックスのことを真面目に考えたことがなかった
考えてみれば私は、子どものころからずっと、性に関わる問題で悩んだり、苦しんだりしてきたのです。極端に禁欲的だった父の暴力的な支配に耐えられず、15歳で家出をしたあげく、やさぐれて投げやりなセックスをして、お酒に溺れました。その後どうにか立ち直り、結婚して娘を産んだのですが、理想が高すぎたのか夢破れて離婚。今度こそと思って2度目の結婚をしたものの、今度は夫に拒絶されてセックスレスになり、悲しみと不満を呑み込んだまま、私はなんと20年近くもずるずると、セックスのない結婚生活を続けてしまったのです。
もう二度とセックスのことで悩みたくない! そう思った私は、まずは、彼に不満をつのらせている自分に問題はないかを、考えてみました。謙虚だったからではありません。正面切って彼に、「セックスが気に入らない」とは言えなかったからです。
すると、自分でも驚いたことに、私は、これまで一度も、セックスのことを真面目に考えたことがなかったと気がつきました。セックスに関わることで、ずっと悩んだり苦しんだりしてきたはずなのに……。たつのさんに指摘されて初めて、腟が劣化することを知ったほど無知だった私は、セックスについても、ほとんどなにも知らなかったのです。
セックスへの不満を押し殺したままにしたくない
セックスに関わることには関心をもつべきではないという日本の性文化が、骨の髄まで染み込んでいたからでしょうが、どう考えても、これは変です。
ちゃんと考えたい。きちんと知りたい。そう思ったら、疑問が次々わいてきました。
若いころ、どうして私は、投げやりなセックスをしてしまったのだろう。
20年以上、セックスレスのまま結婚生活を続けてしまったのはなぜだろう。
もう60代に突入していたのに、なぜ私はセックスをしたいと思ったのだろう。
そもそも、人間にとってセックスとはなんだろう。
それらの疑問はすべて、どうしたら彼とのセックスで満足できるのか、ということにもつながっていました。もしかしたら最後の恋、最後のお相手かもしれないのです。それなのに、これまでのように、不満を押し殺したまま関係を続けるなんて絶対にいやだし、何十年ぶりでときめいた相手と、あっさり別れるのはあまりにも残念です。ダメかもしれないけど、できるだけのことはしてみよう。
Comment