「神様にお返しがしたい」夫の願い
ようやく原因がわかった雪美さんは、血流を良くする薬を服用しながら、もう一度体外受精をすることに。
「流産のトラウマがあり、希望はあるものの本当に恐かったですが……4度目の体外受精は成功しました。妊娠期間中もまた何か起きるんじゃないかとずっと不安でしたが、無事に健康な女の子を産むことができました。もう単純に、本当にうれしかったです」
そして、念願の娘さんを授かったあと、ご主人が再びある提案をしたそうです。
「夫が、『娘に洗礼を受けさせたい』と言ったんです。彼が当時どれだけ辛かったかも、この時にようやく聞きました。流産では誰より私が一番辛かったのは間違いない。だから自分が落ち込む姿は絶対に見せてはいけないと思っていたようで。
思えば、彼は異国で友達もほとんどおらず、文化も違う場所で、コロナであんな状況になり、私以上に心細さやストレスを感じることだってたくさんあったと思うんです。でもそんな姿は全く見せずに、とにかく私を支えてくれた。
そして娘を授かれたのは、ゴンと神様のおかげだと言うんです。だから神様にお礼をするために、娘をクリスチャンにしたいと相談されました」
もちろん、雪美さんに異論はありませんでした。その後は家族で定期的に教会へ通い、ボランティア活動も行っているそう。ご主人の考え方や提案も素晴らしいと思いますが、それを受け入れる雪美さんも、芯の強い女性であり、二人の間には強い信頼関係があるのでしょう。
そして、そんな家族に、さらなる奇跡が起きたのです。
「出産後しばらくして、生理が来ないと思ったら、なんと妊娠していたんです……。自分でもいまだに信じられないですが、自然妊娠です。不妊治療は諦めた頃に突然妊娠したりすると聞いたこともありましたが、そんなの絶対に嘘だと思っていたのに。こればかりは、本当に不思議です……」
まさに奇跡。信仰に厚いご家族が、再び幸運を引き寄せたのでしょうか。今年、雪美さんは二人目の女の子を出産予定です。
「治療の期間は辛いこともたくさんありましたが、私の場合は、友人に大っぴらに打ち明けてスッキリすることが多かったです。同じく不妊治療をしている友人もいて、情報交換をしたり。あまり悩みを内に溜めないようにして良かったと思います。
また海外在住の友人は、不妊治療を諦めて養子縁組を選択していました。その話も詳しく聞いて、私も最後の選択肢にしようと日本の制度を調べたり。こうしたことも含めて、夫や友人と気兼ねなく話し合える環境だったことは幸運だったと思いますし、特に夫には本当に感謝しています」
大変なご経験を細かに語ってくださった雪美さんですが、取材中は何よりもご夫婦の愛情を強く感じました。
不妊で不仲になってしまうという話も少なくない中、辛い期間に強い絆を育み、お互い思いやり、尊敬し合っていた雪美さんとご主人のお話は、本当に胸が熱くなりました。
近年、様々な選択肢が増える中、「家族」を形成するためには、やはり愛情に勝るものはないのだと思います。ご家族の健康と、さらなる幸せをお祈りしています。
写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
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