「身体をさわる」とは何を指すか教える
また、自分の意に反する形で他人に身体をさわられたときにどうすべきかについても、きちんと話し合う必要があります。意に反すると同時に快感でもある場合もあるため(くすぐられるのが嫌いな人もつい笑ってしまうのは、これが原因です)、難しい話です。誰かに身体をさわられて「何か変だ」とか「イヤだ」と感じたら、たとえ痛くなくても、断り方がわからなかったとしても、親や大人(キャンプの引率者や教師など)に報告するように言いましょう。
「身体をさわる」とは何を指すかについても、具体的に話しましょう。「誰かにキスをされたり、服を脱ぐように言われたり、ペニスなどをさわられたり、さわらせろと言われてイヤだと感じたら、すぐに私に言って」といった風に。「その人に『秘密にしておいて』と言われたとしても、それではフェアじゃないから、私にいつでも話してね」と伝えましょう。また、「大人は“誰でも”、子どもの性器にさわってはいけないことは知っているはず。『知らない』と言っていたら、嘘だからね」と教えましょう。
快感のありかを自分で探ることは促してもよい
子どもが“自分の身体”をさわるのは、全く問題ありません。赤ちゃんもさわったりしますが、自然なことです。ただし、「プライベートな場でのみすべきことで、人前(親も含めて)でしてはいけない」と伝えましょう。
実は(ふざけていると思われるかもしれませんが)高校生くらいの女子には促してもよいくらいです。若い女性の多くは、オーガズムを感じた経験がないまま初体験に至ります。そうなると、「相手に何を望むか」だけでなく「自分が何を望むか」さえわかりません。快感を得られる(または得られない)方法の予備知識があれば、自信と主体性を持つことができます。臨床心理士のリサ・ダムール氏は、著書『Under Pressure(プレッシャーに耐える女子たち)』で、「自身の性欲をよく知らない女子は、肉体関係において妥協し、望んでいないセックスを受け入れたり、自身の健康を危険にさらす傾向が最も高いのです」と述べています。子どもには、「自分の身体をさわるのはかまわないし、さわるとどうなるかを知っておくのは、よいことだよ。快感を得るというのは身体の重要な機能の一つだし、将来好きな人ができたら、どうしてほしいかを伝えられるからね」などと言うとよいでしょう。
※本書には「性教育プログラム その②~④」も掲載されています。
著者プロフィール
メリンダ・ウェナー・モイヤー(Melinda Wenner Moyer)さん:『サイエンティフィック・アメリカン』誌の寄稿編集者として表彰を受けており、『ニューヨーク・タイムズ』紙にも多数の記事を寄稿している科学ジャーナリスト。『スレート』誌コラムニスト。一男一女の母親でもある。
訳者プロフィール
塩田香菜(しおた かな)さん:上智大学英文科卒。英国レディング大学大学院児童文学修士号取得。書店勤務、企業内翻訳などを経てフリー翻訳者。一男一女の母として子育てに奮闘中。
『科学的に正しい子育ての新常識』
著者:メリンダ・ウェナー・モイヤー/訳者:塩田香菜
ディスカヴァー・トゥエンティワン 1760円(税込)
「自己中」「飽きっぽい」「嘘」「いじめ」「きょうだいゲンカ」「スマホ・インターネット」「性への関心」など。さまざまな子育て問題への対処法を、一男一女の母でもある科学ジャーナリストがユーモラスに解説します。最新の研究によって導き出された子育て法も登場し、知的好奇心を刺激されること請け合い。日本人が読んでも共感できる事例が満載です。
構成/さくま健太
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