今期も連ドラが出揃ってきました! 特徴的なのは、「久々に恋愛を描いたドラマが充実している」ということ。吉高由里子&北村匠海の『星降る夜に』、広瀬すず&永瀬廉の『夕暮れに、手をつなぐ』、佐藤健&井上真央の『100万回言えばよかった』などなど……。

そのうえで強く感じるのは、昨今は恋愛ものは恋愛もの、お仕事ものはお仕事もの、などと線引きがクッキリとしてきたということ。なぜ今、このジャンル住み分け現象が加速しているのでしょう? 『silent』に沸いた昨年のドラマの傾向を振り返りつつ、分析してみたいと思います。

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開始1分半でキスシーンという分かりやすさ


長く「恋愛ドラマはヒットしにくい時代」と言われていた昨今。そのため連ドラも、1話完結の事件解決ものや医療ものなどが隆盛を極めていました。そんな流れを、たった1作で大きく変えてしまったのが、昨年末放送され社会現象となった『silent』でした。耳が聴こえなくなった青年・佐倉想(目黒蓮)と、高校時代の彼女・青葉紬(川口春奈)のピュアすぎる恋を描き、“死に枠”と言われていた木曜22時枠を大復活させたほどです。

その成功を受けて、というわけではないでしょうが、今期はゴールデンタイムに3本もの正統派恋愛ドラマが並び立っています。そしてこの3本を視聴して思ったのは、どれも最初っから「これは恋愛ものです」とハッキリ打ち出されているな、ということ。吉高由里子の『星降る夜に』にいたっては、開始1分半でキスシーンが登場する分かりやすさです。どれも仕事を頑張っているうちに次第に好感を持つようになって……とか、夢を追っているうちに気持ちが通じ合うようになって……とか、“ついでに恋も”みたいなところはありません。とにかくテーマが明確なのです。

新しさを感じた坂口健太郎と杏の『競争の番人』


実はこのドラマジャンルの住み分け現象、ここ数年ジワジワと増えてきていたのですが、その完全固定化を痛感したのが2022年でした。まず感じたのは、昨夏に放送された坂口健太郎と杏による『競争の番人』。刑事から校正取引委員会の審査官に異動させられた白熊楓(杏)が、記憶力は抜群だけど偏屈な小勝負勉(坂口健太郎)とバディを組み、独占禁止法に違反する会社や人々に立ち向かっていくというもの。

小勝負は、最初は新人でポンコツな白熊をバカにしていたし、白熊は白熊で身勝手な小勝負にキレまくる。こうくれば、これはもう「最初はいがみ合っていた二人が次第に好感を抱くようになり……」というテッパンの展開を予想するしかないでしょう。ところがこのドラマでは、全くそういうことは起こりませんでした。白熊には初回から一貫して素敵な彼氏がおり、やがて彼女が公取委の仕事にのめり込むようになってもイラついたり、ましてや小勝負に嫉妬したりなんてこともしない。終始白熊をサポートする良い彼氏で終わりました。そして小勝負も悲願だった事件を解決。異動となって白熊と離れ離れになるも、新天地で変わらずマイペースにやっている、というオチでした。

こう言っては何ですが、ちょっと拍子抜けというか、一抹の物足りなさを感じないでもなかった。でも、これで良いのです。男女が距離近く仕事をしていれば何でもかんでも恋に落ちるというのでは、あまりにも短絡的だと思いますから。