複雑な家庭環境と、結婚願望


化粧気のない顔におっとりとした雰囲気を纏いながらも、その口調からは紛れもない芯の強さや知性を感じる茜さん。しかしその過去は、かなり意外で壮絶なものでした。

「幼い頃から家庭環境が悪くて、高校卒業と同時に地元の大阪で一人暮らしを始め、水商売をして暮らしていたんです。人の話を聞くのは好きだったので、キャバ嬢は向いていました。おまけに負けず嫌いの性格が幸いして、お店のナンバーワンにもなりました。と言っても、勤務時間外もなりふり構わず営業したり、人間関係やコミュニケーションの本も手当たり次第読んで勉強しました。自分で言うのも何ですが、並々ならぬ努力をしましたね。お金も必要だったので」

突然の「キャバ嬢」「ナンバーワン」という単語が、あまりにも現在の茜さんからは想像できず驚きましたが、どんな形であれ物事に全力投球して結果を出すというのは一つの才能だと感じます。

そうして収入を得た茜さんは、しばし快適な1人暮らしをしていましたが、実の父親によってその生活を壊されてしまいました。 

 

「あるとき突然父親が私の部屋にやってきて、そのまま住み込むようになってしまいました。しかも飲み友達なんかを大勢部屋に連れてきて、昼夜飲んだくれる日々。私は自分の生活を乗っ取られた上に、なぜか彼らの生活のお世話までさせられて。仕方がないので、また小さな部屋を一つ別に借りて避難したのですが……水商売を続けるのも疲れてしまい、家賃を払い続けるのもつらい。だから結婚しようと思い始めたんです」

 

茜さんは水商売を辞め、エステサロンに就職。そこでも持ち前のセンスやコミュニケーションスキルでその手腕を発揮し、なんと数年後にはご自身のサロンを開業するまでになってしまいました。

また同時期に婚活も並行していた茜さんの周りには、候補の男性が数人いたと言います。そのうちの1人が、夫の雅之さん(仮名)でした。

「夫は、キャバ嬢時代に一番お金を使ってくれたお客さんでもありました。親の代から続いている車の整備工場を経営していて、昔ながらの男気があり、頼り甲斐もある人でした。

20代前半の若い頃だから……と言うのは言い訳にもならないかもしれませんが、当時の私は、いや今もかもしれませんが、直感的で短絡的な生き方をしていました。他にも結婚相手候補の男性がいましたが、自分の気持ちや条件などで吟味しても1人に決めることができなくて……。

それで、運命に身を委ねてみることにしたんです」