岸田首相が年頭の記者会見で打ち出した「異次元の少子化対策」に、SNSではさまざまな反応が寄せられました。その中には、「今さら遅い。就職氷河期世代を見放してきたのだから」といった意見も少なくなかったように思います。筆者はまさに就職氷河期世代のど真ん中。子どもはおらず、周囲にも子どもを持たない同年代も決して少なくないため、SNSに飛び交う就職氷河期世代の声を複雑な心境で眺めていました。

国税庁が毎年発表する「民間給与実態統計調査」では、2021年の給与所得者の平均年収が443万円で、平均年齢は46.9歳だった。この年齢は、ちょうど就職氷河期世代と重なる。

そう記しているのは、ジャーナリスト・小林美希さんの著書『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』。取材と各種データから、就職氷河期世代を中心とした日本社会の実情を炙り出し、打開策を模索する本書から、今回はその一部をご紹介します。年収443万円――それは安定か、絶望か、あなたはどう思いますか?

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非正規雇用の率が上昇、40代男性の賃金も減っている


就職氷河期世代とは、どのような年齢層なのでしょうか。改めて本書を見てみると、「内閣官房に就職氷河期世代支援推進室を設置した2019年、政府は、就職氷河期世代を『おおむね1993年卒から2004年卒で、2019年4月現在、大卒でおおむね37〜48歳、高卒で同33〜44歳』と定義」とあります。

 

就職氷河期世代支援推進室では、同世代の中心層である35〜44歳の「非正規の職員・従業員」371万人として集中支援するとし、その対象者は100万人。今後3年間で30万人を正社員にすると目標を掲げていたといいます。ですが、小林さんは中心層だけで見れば問題を見誤ると指摘。その理由を、次のように述べます。

「45〜49歳だけで非正規社員は226万人もいて、氷河期世代全体の非正規社員は約600万人に上ったからだ。多くのキャリアカウンセラーが『正直、45歳以上の正社員化は難しい』と口を揃える状態だ」(小林さん)。このような見方が国会でも取り上げられ、支援対象は50代にまで拡大することになりました。

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実際、小林さん本書で参照したデータでは、2002年と2021年とでは非正規雇用の率が上昇し、25〜54歳の働き盛りの4人に1人、あるいは3人に1人が非正規である実態が浮き彫りになっています。

さらに本書では、国税庁の「民間給与実態統計調査」から、金融不安が起こった1997年と2021年の40代男性の年収を比較。すると「40〜44歳では645万円から584万円となって年間61万円減、45〜49歳は695万円から630万円になって年間65万円減っている。同調査から給与の分布を見ると、年収400万円以下が53.6%と半数以上を占めている」ことがわかりました。