介護がしやすい部屋のポイント


在宅介護の場合、親が生活する部屋のレイアウトや場所は重要です。「介護する側、される側にも便利な間取りにしたい」と思うのは当然のこと。環境が整えば、お互いの負担も減らすことができます。そこで介護がしやすい部屋のポイントを見ていきましょう。

【介護リフォーム】ポイントはベッドの置き場とトイレ&水回り。プロが教える「知っておきたい注意点」_img1
 

①部屋の広さ
部屋は広すぎても狭すぎてもデメリットがあります。広すぎると、部屋の中での移動はもちろん、トイレに行くたびに長い距離を歩くことになり、転倒や疲れのリスクが高まります。逆に狭すぎる部屋に長時間いつづけると、窮屈で閉鎖的に感じてしまって精神的にもよくありません。介護ベッドを置くことも考えると、6〜8畳くらいが平均的と言えるでしょう。

②部屋のレイアウト
6〜8畳の部屋に介護ベッドを置く場合、かなりのスペースを取ることになります。それだけに、ベッドの置き場所は重要なポイントです。そこで、横になりながらでも外の景色を眺められる、テレビが見やすいなど、個人の意思も配慮した位置に設置してください。高齢になるとどうしても臭いがこもりやすくなるので、換気のためにも窓が近くにあると良いでしょう。

介護ベッドを置くのであれば、畳は傷つくのでフローリングの方が適しています。失禁などが増えると、畳は吸い込んでしまって不衛生なので、和室よりも洋室が良いでしょう。畳からフローリングのリフォームは、後ほど説明する「介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費」の制度を利用すれば、保険が適用されます。

麻痺がある場合は、麻痺の方が壁側になるようにベッドを配置してください。ベッドは高さを調整できるものがオススメです。就寝時は低床にして転落を防ぎ、車椅子の移乗時はベッドを高くして介護者の腰への負担を減らします。

③部屋の配置
介護をする部屋は、転倒や転落リスクを避けるためにも当然1階が好ましく、浴室やトイレ、キッチンなどの水回りも1階にあると介助を行いやすくなります。また、リビングから隔離されたところに部屋があると、介護をされる側が疎外感を感じてしまいます。親の部屋はリビングに隣接しているとすぐに様子も確認できて安心です。

 


トイレと玄関はできればリフォームを


日々過ごす部屋だけでなく、併せてリフォームを考えたいのがトイレと玄関です。余裕があれば、浴室とキッチンのリフォームを検討しても良いかもしれません。

①トイレ
入浴や食事に比べて、1日の中で圧倒的に多いのがトイレに行く回数。言い換えると、トイレの負担を減らせられれば、介護のしやすさが改善されるのです。そのため、親の部屋とトイレが近くにあることは譲れない条件とも言えます。ポータブルトイレを利用するという方法もありますが、清潔感は保ちたいですし、ポータブルタイプはどうしても臭いがこもりやすいので、可能であればトイレに連れて行けることが理想です。

広さは車椅子でも入れるくらいの十分なスペースがあればベストですが、多くの家庭は難しいと思います。そこで縦165cm×横75cmを目安にしてみてください。少なくともこれだけは外せないというのは手すりです。横手すりは便座への立ち座り動作が楽になり、縦手すりは転倒を防いで身体のバランスを支えます。これらのことを踏まえると、最も実用的なのはL字型の手すりです。ドアが内開きの場合は、トイレの中で転倒されると助けられないので注意してください。

②玄関
玄関は、車椅子が通れるだけのドアの幅を確保し、できれば段差は解消しておくこと。さらに座れる椅子や手すりが設置してあると、介助がしやすくなります。玄関ドアは引き戸の方が開閉しやすく、開けっ放しにできてスペースが確保できます。

③浴室
入浴補助は力仕事です。また、洗い場は滑りやすいため、転倒する可能性が高くなります。そこで浴室には濡れても滑らない床材を使い、手すりも腰の高さを基準に付けてください。こうすることで介護する側が楽になり、介護される側も安心です。

浴槽は、低めの方がまたぎやすいので介助が楽です。広さは湯船に浸かれる大きさが好ましいですが、大きすぎても溺死の危険が高くなるため、状態によって選択してみてください。浴室は、2畳以上のスペースがあるとゆったり介助できるでしょう。シャワーチェアもすぐに座れる椅子として重宝します。

④キッチン
最近は車椅子対応のシステムキッチンも多く登場しているので、親が料理好きであれば検討したいところです。コンロやシンクの下に足が入る設計になっていますが、不安定な椅子はバランスを崩して転倒する危険性があるので注意してください。

20万円までの工事費用の7~9割が支給


介護の負担軽減や転倒予防のために自宅をリフォームしたい時は、「介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費」を利用しましょう。これは要介護認定を受けている被保険者が自宅の住宅改修を行う場合、その工事費用(20万円まで)の7~9割が支給される制度です。20万円を超える工事を行った場合は、1~3割の自己負担額に加え、超えた分の全額が自己負担となるので注意しましょう。上限の20万円は、数回に分けて申請することも可能です。

自治体によっては、独自に住宅改修費制度などを設けているところもあります、支給額や支給方法、支給対象は自治体によって異なりますので、役所に問い合わせをするか、ホームページでチェックしてみてください。

バリアフリーなどのリフォームは、早めにやり過ぎると足腰を鍛える機会が減ってしまうなど、デメリットも少なからずあります。その辺りを考慮して、ご自身のタイミングに合わせて「介護しやすいされやすい家」を作ってみてはいかがでしょうか。


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

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