お芝居と同じく「読者の方々を驚かせたい」という謎の使命感を込めた一冊


ーー前書きで「胃もたれする人続出の可能性がある」と予告されている通り、初のフォトエッセイ『松の素』は松本若菜さんの遊び心が詰まった濃厚な一冊。出版社との打ち合わせの段階から明確なコンセプトがあったのでしょうか?

松本若菜さん(以下、松本):自分のフォトエッセイを作るなんて人生に1度の貴重な機会かもしれないし、せっかくなので、松本若菜の成分を色々とぶち込ませていただきました(笑)。具体的なテーマを設定していないので一貫性がないのですが、そのおかげで最後まで飽きずに楽しんでいただける本になったと思います。

 

ーーたくさんの企画のなかで、松本さんが架空の演歌歌手やアイドルになりきる「なりきりカット」に衝撃を受ける人が多いと思います。メイクや衣装のクオリティが高くて一目で笑えるし、その役柄になりきった紙上インタビューも秀逸でした。​

 

松本:これまで演じたことがなくて、これからも演じることがないであろう職業をピックアップしたんですよ。白塗りメイクが必要な役(シークレットコンテンツ)もあったので撮影は大変でしたが、「読者の方々を驚かせたい」という謎の使命感を燃やして頑張りました。メイクや衣装からインスピレーションを得て撮影現場で即興インタビューに応えているのですが……全部ひっくるめて奇妙な世界観を温かい気持ちで受け止めていだけたら幸いです(笑)。

ーーぬりえやシールなどの付録もご自身のアイデアですか?

松本:そうですね。最初は特別なコンテンツとして袋とじページを作りたかったんですよ。ドキドキして開いてみたら普通の写真だった……みたいな。予算のムダ遣いにもほどがあるので、仕方なく諦めたのですが。悩んだ結果、付録はシールにしたのですが、それも誰得なのか分からないシュールなものになっているので、実用性はほとんどないかもしれません(笑)。

ーー「見る人を驚かせたい」「期待を上回りたい」というスタンスは俳優としてのお芝居にも通ずるものがあるのでしょうか?

 

松本:そうかもしれないです。作品によって役づくりのアプローチは変わりますし、目立ちたいわけでもないのですが、新しい役に出会う度に“自己ベスト”の表現を探したいと思っています。セリフの言い回しや表情など、「こんな感じかな」と思った段階から、もう一度疑ってみる。そうやっていろんなパターンを想定して現場に入れば監督やスタッフさんとの擦り合わせもはかどりますし、自分でも想像していなかったキャラクターが生まれるこがあります。昨年『やんごとなき一族』で演じた美保子が、まさにそうでしたね。