現時点で厚生年金の適用対象となるのは社員101人以上の企業ですが、政府は今後はこの用件をさらに厳しくし、中小零細な企業でも社会保険に加入するよう求めていく方針です。儲かっていない企業の場合、社会保険料の企業負担が加わると経営が難しくなるという問題があり、社会保険に全員加入させるという方向性自体に難色を示す企業も少なくありません。ある部分の見直しを行うと、別のところで不公平が発生し、そこを改善すると、今度はさらに別の反対意見が出るという状況で、収拾がつかないというのが現状です。
この制度が出来上がった背景には日本の社会情勢が大きく影響しています。
昭和時代の日本は専業主婦世帯が多く、夫が外で企業戦士として働き、妻が家庭で支えるという形で役割分担が行われてきました。今となっては、こうした典型的な専業主婦世帯は減少しているものの、現実問題として、家計の主な稼ぎ手は夫で、妻が補助的な仕事をして家計を支える世帯はまだまだ存在しています。
全員がそれなりに労働を行い、相応の賃金が得られる社会にシフトできれば、一連の問題は自然と解決されるはずでした。ところが、新しい社会形態にシフトする前に、日本人の賃金が大幅に下がり、生活が苦しくなるという問題が発生。130万円問題が再びクローズアップされる状況となっています。
日本は民主国家ですから、最終的には国民がどう判断するかにかかっていますが、あくまで生活者の視点に立って考えた場合、年金に入った方がメリットが大きいのは間違いありません。年金に入ると目先の手取りは減ってしまいますが、将来、年金という形で支払った額以上のお金を受け取ることができます。
若いうちは老後の生活についてなかなかリアルに想像できないと思いますが、富裕層は別として、年金を受給する年になった時、5000円でも1万円でも年金が増えているのと、そうでないのとでは雲泥の差になります。
手取り収入が減ることを恐れて社会保険に入らず、その分の年金を受け取らないケースと、130万円の壁を超えても、手取りが増えるまで労働時価を減らし、社会保険に加入したケースとでは、最終的に得られる生涯賃金は大きな違いとなるでしょう。
政府の方針はともかく個人レベルでは、可能な限り社会保険に入り、たくさん仕事をして収入をアップするという方向性に舵を切った方がよいと思います。
前回記事「更迭された秘書官の差別発言を「多様性の一つ」という意見が完全に間違っている理由」はこちら>>
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