こうした事態を回避するには、エアコンが上にあってもそれなりに部屋全体を暖められるようにすればよい、ということになります。サーキュレーターなどを使って空気を循環させるのがもっともお手軽ですが、理想的なのは家全体を断熱構造にすることでしょう。
最近の注文住宅では、断熱仕様も増えており、こうした家の場合、エアコン1台あれば家全体を年間を通じてほぼ同じ温度に保つことも可能です。
しかしながら、この話は今から家を建てる人にしか当てはまりませんから、既存住宅の場合、こうした効果は期待できません。既存の建物で似たような効果を得る最大の方法は窓の二重化ということになります。
家の中にある熱の多くは窓から外に逃げて行きますが、残念なことに日本の窓の断熱基準は欧米各国の中では最低レベルとなっており、最近では中国にも抜かされている状況です。窓を断熱用ペアサッシに変えるのが理想的ですが、そうでない場合には内側にもう一つ窓を付けるという方法があります。
実際、筆者は自宅(古い中古マンション)に二重窓を設置しましたが、効果は劇的で、電気代は約2割から3割ほど安くなりました。家全体で20万円ほどの出費でしたが、電気代が安くなったことに加え、何より室内が圧倒的に快適になり(上下の温度差が解消)、ヒートショックの危険がなくなったという点で、筆者自身は元を取れたと考えています。
賃貸住宅の場合、大家さんとの兼ね合いなどもありますから設置が難しいかもしれませんが、まったく不可能というわけではありません。DIYが得意な人の中には、可能な範囲で賃貸住宅の窓を二重化しているケースもあるようですから、検討してみる価値はあるでしょう。
戸建てかマンションかなど、家の造りによって状況は様々ですが、エアコンというのは他の暖房機器と比べて圧倒的に効率が良くお得です。エアコンを可能な限り活用し、その中で足りない部分を他で補うといった使い分けをすることが節電の近道です。
1点だけ忘れてならないのは、エアコンの場合、寒冷地の環境に弱いことです。
先ほど説明したように、エアコンは外部の熱を集めて室内に移動させる技術ですから、外気温が著しく低くなると効率が急激に低下します。たびたび氷点下になるような地域の場合、かえって電気代がかかってしまったり、思ったように部屋を暖められないという事態が生じます。したがって、節電を考える場合には、どの地域に住んでいるのかという点も十分に考慮に入れてください。
前回記事「【年収130万円の壁】岸田首相は「制度見直しを検討」も、解決は容易ではないワケ」はこちら>>
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