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外部からの移住者に対し、町の広報誌が「都会風を吹かさないで」「品定めされることは自然」といった記事を掲載したことが波紋を呼んでいます。この話が報道されてから1か月以上が経ちますが、議論はなかなか収まらないようです。

福井県池田町は、都会からの移住者を受け入れていますが、地域住民とのトラブルが発生しないよう、「心得」という形で広報誌に記事を掲載しました。記事には「これまでの都会暮らしと違うからといって都会風を吹かさないよう心がけて下さい」「(新しく入って来た人に対して)どんな人か、何をする人か、どうしてここに来たのか、と品定めされることは自然です」といった文言が並んでおり、排他的ではないかとの批判が出たわけです。

 

これは町の広報誌ですから、ある意味で行政機関が公式に発表した内容ということになります。民主国家においては住みたいところに住む権利というのは絶対的なものです。したがって、移住する人を拒むようなニュアンスがある記事を掲載することは、行政機関としてはやや問題があったと考えられます。

しかしながら、この問題は、あくまで行政機関に限って成立するものと言って良いでしょう。

それぞれの地域にはそれぞれの生活があり、「郷に入れば郷に従え」ということわざがあるように、外から来た人は、一定程度、地域のルールに従うというのは社会常識の一つとなっています。中身はともかくとして、コミュニティに独自の決まりがあることを事前に知っておくのは悪いことではありませんし、移住する人もそれを前提にしてコミュニティに参加する態度が必要であることは言うまでもありません。

一方で、いくら過疎で困っているからといって、むやみに移住者を受け入れれば、両者のギャップが社会問題化するのは目に見えていますから、地域側も安易に移住を喧伝すべきではないでしょう。

近年は移住ブームが活発になっていることもあり、あまり深く考えずに移住を決断し、実際に住んでみたところ、想像とは違ったといったトラブルが発生するケースが増えているようです。

一連のトラブルは都会と地方という対立軸で語られますが、コミュニティのあり方の違いというのは、転職などにおいても発生しますから、特段、珍しいことではありません。最先端のIT企業から、古いしきたりが残る企業に転職した場合、転職者は「なぜムダなことばかりやっているのか」と思うでしょうし、受け入れた企業の社員は、「新しいやり方を押しつけられる」との印象を持つかもしれません。

 
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