でもこの作品を是非「国際女性デー」に見てほしいと思うのは、この小さいディリリが世を騒がせるある組織を、その機転と頭の良さで撲滅に導くから。その組織こそ「男性支配団」。彼らはこの時代に女性に許された大学進学に反対し、少女を誘拐しては地下のアジトに監禁し、教えているのは何と「四足歩行」!

冗談みたいですが、つまりはこの時代にいわゆる基本的人権が保障されていたのは男性だけ。つまり「四足歩行を強いること(なんと椅子代わりに使われています!)」は、女性を人間として扱わないということの象徴であるわけです。そんな彼らがディリリを付け狙うのです。

映画は「男性支配団」にとどまらず、この時代にあった別の差別も、決して見逃していません。そもそもディリリ自身が白人と黒人を両親に持ち、ニューカレドニアでは「肌の色が薄すぎる」、フランスでは「肌の色が濃すぎる」と差別されています。

極めつけは冒頭。ディリリは、パリ万博のアトラクションとして、ニューカレドニアから連れてこられた現地の人々とともに、半裸の姿で「ニューカレドニアでの生活の再現」を演じています。映画は悲壮感なくカラっと描いているのでうっかりスルーしそうになりますが、これは実際のパリ万博で行われていた、悪名高きアトラクション「人間動物園」というものです。

これに類することは、実は日本においても、例えばアイヌに対して、つい最近まで行われています。せっかくの国際女性デー。そんなことを頭の片隅にちょーっとだけ置きながら、そんなことを母子で話しながら、ぜひぜひこの映画の美しさを味わってくださいね!


参考:大学が保管するアイヌ遺骨の返還について|文部科学省

<作品紹介>
『ディリリとパリの時間旅行』

国際女性デーに「親子で」観たい!うっとりするような映像美の傑作長編アニメ『ディリリとパリの時間旅行』_img0

ブルーレイ、DVD発売中 発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン 価格:5170円(税込み) ©2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

「キリクと魔女」「アズールとアスマール」などで知られるフランスアニメーション界の巨匠ミッシェル・オスロ監督が、19世紀末から20世紀初頭のベル・エポック期の美しいパリの街を舞台に描いた長編アニメーション。ニューカレドニアからやって来たディリリは、パリで出会った最初の友人オレルとともに、少女たちの誘拐事件の謎に挑む。キュリー夫人やパスツール、ピカソ、モネら時代を彩った天才たちに協力してもらいながら、エッフェル塔やオペラ座、バンドーム広場などパリの街中を駆け巡って事件解決を目指す2人だったが……。第44回セザール賞で最優秀アニメ作品賞を受賞。Prime Videoほかにてレンタル配信中。



構成/山崎 恵
 

国際女性デーに「親子で」観たい!うっとりするような映像美の傑作長編アニメ『ディリリとパリの時間旅行』_img1