3月8日の「国際女性デー」に合わせて、これまでミモレで紹介してきたエンタメ作品からこれぞ、という名作を改めてピックアップ! 今回は、#Metoo運動の発端となった衝撃のスクープと、その裏にある女性たちの葛藤を描いた映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』をご紹介します。
※元記事は2023年1月14日に公開されたもので、作品の情報等は公開当時のものです。
国や民族、言語、文化、政治といったあらゆる違いを超えて、これまで女性たちが達成してきた成果を讃える日です。
発端は1908年、米・ニューヨークの女性労働者が起こした待遇の改善を求めるストライキ。これを機に、女性の権利や政治的・経済的な社会参加を求める動きがヨーロッパ全域へと広がっていきます。決定打となったのは1917年、第一次大戦下のロシアで起こった「二月革命」です。女性たちの“パンと平和”を求める抗議は、男性たちや兵士らをも巻き込んだ民主革命へと発展します。結果、ロシア皇帝による帝政は崩壊。暫定政府は女性の選挙権を認めました。
この二月革命が起きたのが3月8日(当時のロシアではユリウス暦2月23日)でした。国際婦人年である1975年に、国連はこの日を「国際女性デー」とすることを発唱。77年に制定されました。
世界中の#MeToo 運動はそうだ、ここから始まっていた。6年前に米ニューヨーク・タイムズ紙がスクープしたハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件でした。1月13日(金)から全国公開された映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』はその調査報道を淡々と、かつ女性たちの内なる感情を引き出すように描いています。
ゾッとする性的暴行事件の本質に迫る
はっきり言って、ずっしり重めの映画です。『ロード・オブ・ザ・リング』『恋におちたシェイクスピア』『パルプ・フィクション』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『英国王のスピーチ』など数々の名作を手掛け、ハリウッドで“神”と呼ばれた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年に及ぶ性的暴行事件を告発していくものです。
ただし、実話に基づくこのスクープ事件を派手に見せるわけでもなく、#MeToo の勝利を煽るものでもありません。女性ジャーナリストの2人が電話をかけ、メールを送り、資料を入手して確認し、編集者と会議を繰り返す取材活動の一部始終を見せながら、ゾッとする性的暴行事件の本質に徹底的に迫ります。
ジャーナリズム映画として上質であることは間違いありません。アメリカの最大手新聞社、ニューヨーク・タイムズ紙で調査報道担当の記者を演じるのは実力派女優のこの2人。アカデミー賞に2度ノミネート実績を持つキャリー・マリガンと脚本家でもあるゾーイ・カザンです。先日発表されたばかりの第80回ゴールデングローブ賞では残念ながら受賞には至りませんでしたが、キャリー・マリガンが本作で助演女優賞にノミネートされました。
賞レースで注目されている理由の1つは、足で稼ぎまくる女性ジャーナリストたちの姿をリアルに映し出したこと以上に1人の人間として、なぜこの事件を扱い、告発することができたのか、その理由が明確に伝わってくるからです。感情が揺さぶられる瞬間が何度となく起こります。
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