どうしたら「その人」になれるか。どうしたら自分たちの物語だと思ってもらえるか


――映画が公開される前、そして公開後もたくさんのインタビューを受けられたと思いますが、その中で、【リアリティ】というのをひとつのキーワードとして大切にされてきた様子が伺えました。改めて、役作りのためにされてきたご準備を聞かせてください。

鈴木亮平さん(以下、鈴木):エゴイスト』は実話を元にした話です。まずは実際の原作者の方がどういう方だったのかというのを、知人の方々に伺うところから始めました。“リアリティ”という面では、監督のドキュメンタリータッチな撮り方や、セリフを台本通りに喋らなくてもいいという“即興劇”を重視した現場であったことから、本当に【その人】にどうやったらなれるかを、自分なりに探っていったつもりです。

 

鈴木:それともうひとつ。『エゴイスト』はゲイカップルの話でもあり、そしてそのお母様の話でもあります。当事者の方々が観てくださったときにリアルと思っていただけるかどうか、自分たちの物語だと思っていただけるかどうかに気を配り、さらに監修の方と話し合いながら、そういったリアリティを大事にしていきたいと思って作りました。


鈴木亮平さんが演じた【斉藤浩輔】という役柄は東京の出版社でファッション誌の編集者として働いているという設定です。実際、出版に関わる様々な職種の方はゲイであることをカミングアウトしている人も少なくなく、映画の中での鈴木さんの立ち居振る舞いを見ていると、まるで知り合いの1人のように思えたのが印象的でした。

 


――その役作りやリアリティを追求するプロセスの中で新鮮に感じたこと、気づきになったことなどありましたか?

鈴木:たくさんあるんですけどね……。せっかくだから、今までのインタビューで話していないことを話したい(笑)。なんだろうな……。いっぱい受けてきたもんね。今日(※)だからこそ話せること、ありそうだよね(と、宮沢さんを横目で見る鈴木さん)。
※取材日は公開された翌日だったため。

――印象に残っている出来事などがあれば、ぜひ。

鈴木:実際に出版社で働いているファッションの編集者の方にお話を伺ったんですよ。その方もゲイの方でしたが、職場ではカミングアウトしていないという話を聞いたんです。ファッションの現場って、セクシュアリティに対してもっと寛容だと思っていたんです、僕は。だけどもその方がおっしゃったのは、出版社ではゲイであると公言すると出世に響くと。それが、たとえファッション誌だったとしても。

――意外です。わりと受け入れられている印象です。

鈴木:そうですよね。端から見るとセクシュアルマイノリティがすごく受け入れられている業界だとしても、まだまだ変えていかなくてはいけないことはたくさんあるんだな、生きづらい環境ってたくさんあるんだなと思いましたね。それは芸能界にしてもそうです。新しい気付きでした。