リアリティを生み出せたのは、気持ち的な準備とテクニカルな準備の両方があったから


宮沢氷魚さん(以下、宮沢) :先程、亮平さんがおっしゃった通り原作があるので、その原作の世界をもちろんベースに役作りというものをスタートさせました。(中村)龍太役について書かれていることは限られてはいるんですけど、僕自身、そこからすごく得るものがたくさんあったんです。こうだったんだろうなという自分の想像の膨らませを入れつつ、あくまで原作をメインに考えて、あとは自分にできることは何なんだろうと考えたときに、やはり思い至ったのはゲイコミュニティのことをちゃんと理解するというところでした。

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数々のインタビューでも「15年以上親交を深めてきた仲のいいゲイの友達がいる」とお話をされていた宮沢さん。彼から学ぶことが多かったのだと、続けてくれました。

宮沢:この作品が決まってクランクインするまでは、ふたりでご飯に行ったり、他愛もない話をする時間を取ったりしましたが、彼と共に時間を過ごすだけで分かることがたくさんありました。もうひとつ、僕が演じた龍太はパーソナルトレーナーの役でもあったので、自分が鍛えるだけではなくて“教える”ための準備をやらせてもらったんです。これがえらい難しいもので(笑)。

自分が鍛えるのは、もちろん自分が頑張ればできることでもあるんですけど、教えるとなるといかに教えている相手のモチベーションを上げるかとか、その人にちゃんとあったトレーニングメニューを考えてそれを相手と共有するといった、そういったところがとにかく難しくて(笑)。そういう気持ち的な準備とテクニカルな準備の両方があったからこそ、この作品においてのリアリティが生まれたんじゃないかなと思います。

 

――宮沢さんご自身がパーソナルトレーナーとして“教える側”としての練習もされたということなんですね。

宮沢:はい。一緒にトレーニングについてくれた方がいらっしゃるのですが、序盤はもうとにかく自分が鍛えなくてはいけなかったので、自分を鍛えながらもどういう言葉をかけてくれているんだろうとか、そういうのを意識しながらトレーニングを受けました。ウェイトの付け方や外し方、ストレッチの方法など、全部自分がやりながら実際に見て学んで、最後の方はトレーナーとして教えるだけの稽古時間を設けてもらい、スタッフの方に僕が実際ストレッチやトレーニングを教えるのを支えてもらったんです。

鈴木:そのトレーニングのシーンがかなりキツくて、劇中で「見て、見て、手が震えてるんだけど」と僕が言うシーンがあるんですけど、自分で見ても演技じゃない震え方だなと思って(笑)。あれを演技でやれたらすごいんだろうけど、今後もトレーニングしていく身としてあのリアルな痙攣を映画に残せたのはなかなか良かったのでは、と思っています(笑)。

宮沢:きっと観てくださった方、誰も引っかからないシーンですよね(笑)。でも亮平さんは、喜んでいました。