平穏な日常に潜んでいる、ちょっとだけ「怖い話」。
お隣のあの人の独白に、そっと耳を傾けてみましょう……。
 

第12話 21時のファミレス、夜の不穏な会合

 

「お待たせ、チサトちゃん! 今日は以前お話しした『尊敬する先輩』も来てくれたの。こちら、キミコさん。あら、2人掛け席? じゃあテーブル、くっつけましょ」

――あーあ、この席、外れだわ……。

私は21時のファミレスで、隣のテーブルが4人席仕様に連結されていくのを横目に、ひそかにため息をついた。

 


30代から副業としてWEBライティングを始め、その後独立。「フリーライター」を名乗るようになって5年が経つ。ペンネームがちょっと知られるようになり、コラムの依頼も増えていた。

いただいた仕事は極力断らない。ありがたいことに仕事はどんどん増え、最近では日中だけでは終わらず、気分転換を兼ねて深夜まであちこちのカフェやファミレスで原稿を書いていた。

集中力が切れてくる1日の終わり、しーんと静かな一人暮らしの部屋よりも、ほどよくがやがやした場所のほうが執筆がはかどるから不思議なものだ。

しかし、今夜はその目論見も外れた。隣のテーブルの、20代後半であろう女性が静かにスマホをいじっているので安心して原稿を書いていたら、急にけたたましい「連れ」が2人も合流。あとからきた女性たちは30代と……もう少し上、40代か。

――どうせうるさいお隣さんなら、デートとか合コンとかだったら、恋愛コラムネタのヒントになったのにさ。

私は乗らない筆のせいで若干ささくれた心持ちで、耳にワイヤレスイヤホンを突っ込むと、無理矢理意識を原稿に集中させた。

……しかし、次第に、隣の会話が気になって仕事が手につかなくなってきた。
 

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隣の席から聞こえてくる会話が、今夜の怪談の始まり……。
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