もっとも、5カ月ほど9126円の上限価格が続いた後、23年2月からは料金が7300円まで下がっています。これは電力会社が料金を引き下げたのではなく、政府の電気代補助政策が発動されたことが要因です。岸田政権は電気代の高騰で家計が苦しんでいることを踏まえ、電気代をの補助を行うことを決定しました。この補助は2023年1月から8月まで続き、23年9月以降については、半額の補助が継続する予定です。

では今後の電気料金はどう推移するのでしょうか?

先ほど説明した通り、電力各社は上限価格を突破していることを踏まえ、値上げを申請したわけですが、値上げが認められた場合でも、際限なく価格が上昇するとは限りません。グラフを見ていただければ分かるように、原油価格は22年後半から落ち着きを見せ始めており、現在はピーク時と比べるとだいぶ低い水準にとどまっています。

原油価格はロシアによるウクライナ侵攻の影響を大きく受けますから、今後、再び価格が激しく上昇する可能性は否定できませんが、仮に今の水準で原油価格が推移すれば、今後、大幅な値上げは回避できる可能性があります。

過去の料金を見てすでにお気づきかもしれませんが、14年頃にも現在の水準に近いところまで料金は上がっていました。しかし、当時は今ほど電気代の高騰で家計が破綻しそうだという声は大きくなかったと思います。その理由は、食品など他の品目価格は上昇しておらず、トータルで見た場合、家計の支出は今ほど増えていなかったからです。

写真:Shutterstock

しかし10年代後半からは賃金も伸び悩み、さらに食品価格が急激に上昇したことから、多くの家計が厳しい状況に追い込まれています。同じ電気料金の値上がりでも、10年前とは状況が違うことを政府関係者はよく理解しておく必要があるでしょう。

 

一連の価格上昇は、そろそろピークを迎える可能性も見えていますが、電気料金や食品が劇的に安くなるとは考えない方が良いでしょう。家計としては、今後もできるだけ支出を控えると同時に、副業などを通じて世帯収入を増やす努力が必要だと思います。

また家の中での冷暖房のあり方をもう一度見直すことで、恒常的に電気代を節約する試みもより重要となってきます。酷暑がやってくるまでにはしばらく余裕がありますから、この間に夏以降の対策を考えておいた方がよいでしょう。

 

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