脚本家・北川悦吏子が生み出すヒロインは、いつも周囲を振り回す。『ロングバケーション』(フジテレビ系)の南(山口智子)も、『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』(TBS系)の杏子(常盤貴子)も、『オレンジデイズ』(TBS系)の沙絵(柴咲コウ)も、勝気で喧嘩っ早い。だから賛否両論があるけれど、私はいつも“放っておけない”っていいなと思ってきました。
今って、乃木坂46などの坂道ブームも相まって、目を離したらどこかに消えてしまいそうな儚さを求める女の子が多いじゃないですか。女性ファッション誌を開けば、“儚げメイクのコツ”や、“色素を薄く見せる方法”がズラリと並んでいる。
そう考えると、『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)の空豆(広瀬すず)は、時代が求めるものと逆行しているヒロインですよね。生命力が強いというか。何度倒されても、起き上がる強さを持っている。あまりの野蛮さに批判の声も多かったけれど、音(永瀬廉)にとっては絶対に忘れられない女の子だったと思うんです。
もしも2人が結ばれていなくても、音の心のなかにはずっと彼女の存在が残っている。ほかの女の子と一緒にいたら、「なんか物足りないな」と思ってしまうはず。北川作品のヒロインは、好き勝手生きているのに愛されるんですよね。だから、ちょっぴり嫉妬してしまうのでしょうか。
「わがまますぎて、相手が可哀想!」なんて言いつつも、心のどこかでは無条件で愛される彼女たちが羨ましい。『夕暮れに、手をつなぐ』の音も、「僕は、このまま逃げ出してしまおう。明日までは面倒見ないよ、と思っていた」と言っていましたよね。
それなのに、結局はあれこれ手を焼いてあげていた。先回りして人の気持ちを考えすぎてしまう私は、あんなふうに自由に生きられたらなぁ……と思ってしまうのです。
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