ただ、北川作品のヒロインは、実は脆さを持っているという共通点があります。いちばん衝撃を受けたギャップは、『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)の碧(菅野美穂)が、過呼吸に悩んだ経験があること。碧は、どこからどう見てもストレスフリーな女性でした。思っていることはすぐに口に出すし、わがままもたくさん言う。でも、小説家の彼女は、書けないことにストレスが溜まると過呼吸を発症してしまうらしい。

『夕暮れに、手をつなぐ』の空豆もそうでした。めちゃくちゃ強いけれど、デザイナーとしてのプレッシャーが原因となり、眠れなくなってしまったり。恋人に婚約破棄されたショックで、自殺をしようとしていたこともある。

強く見える人間にも、必ず弱い部分はある。むしろ、強さという名の鎧を纏っている人ほど、中身は脆かったりする。北川作品のヒロインは、それを体現しているんですよね。だから、浮世離れしすぎなくてすむというか。憧れと共感性を合わせ持ったキャラクターになるんだと思います。

『夕暮れに、手をつなぐ』、北川悦吏子だからこそ生み出せた世界観


3月21日に最終回を迎えた『夕暮れに、手をつなぐ』は、平成ドラマの女王・北川悦吏子が、令和でも力を発揮できることを証明した作品でした。

ワイヤレスイヤホンを落としてしまったことから始まる運命の恋。LINEに取り消し機能が追加されたことで恋がすれちがってしまったり、音が所属するグループ・BPMがどんどん有名になっていく様子が、再生回数を通して描かれたこともありました。音の動画が再生されていくたびに、空豆との距離は遠くなってしまうんだな……と思うと、本当に苦しかったです。

だからこそ、最終話の怒涛のラストスパートに鳥肌が止まらなかった人もいるのではないでしょうか。私は、「やっぱり北川作品からしか摂取できない栄養があるなぁ」と感じました。力強さと脆さをあわせ持つ空豆に、脆く見えて実は強い音。2人が青春を終えると、その先には運命の恋が待っていた。

いつかまた、北川作品のロマンティックな空気感に酔いしれたい! それまで、『夕暮れに、手をつなぐ』を何度も観返しておこうと思います。

 

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