平穏な日常に潜んでいる、ちょっとだけ「怖い話」。
お隣のあの人の独白に、そっと耳を傾けてみましょう……。
第14話 最高の夜に、不気味な予告
「たっこ、利恵! ねえ、ちょっとこれ見て……!」
表参道のイベント会場。華やかなウエディングパーティが始まって間もなく、幹事仲間の一人、弓香が会場の外に私と利恵を引っ張り出した。
「弓香ったら、今シャッターチャンスだったのに。後半は余興だし、幹事は前半しかゴハン食べられないのよ……って!! なにこれ!」
利恵が大きな声を出して、弓香がしいいっ、と眉を吊り上げる。手にしているのは今日のプログラム。その最下段、余興用切り取りアンケート欄を見て、私は思わず息をのむ。
『この会めちゃくちゃにしてやる、なにもかも』
赤いペンで書かれたその字は、呪詛のような禍々しさを放っていた。
「床にこれが落ちていて。半立食のパーティだから、誰のかはわからないの。アンケート部分を回収していて、拾ったら、これ。香澄の名前のところに、ぐりぐりって丸がついてる。……なんか、イヤな感じがする」
会場と化粧室を行き来する人の視線を避けるように私たちはメモを囲んで、通路のはじによった。利恵が手に取って、まじまじとそれを見る。
「怖い……でもまさか本人には言えないよね。哲也くんも、こんなの見たら心配するだろうし。困ったな、男性陣の幹事に共有して、不審な動きがないか見てもらう? お店の責任者に言っても……できることは限られてるだろうしね」
利恵が気味悪そうに周囲を見渡した。この1.5次会を仕切っている私たちの責任は重大だった。
「このアンケート無記名だし、回収ボックスでもう集め始めてるから特定できない。弓香、これとっておいたほうがいいよ。何かあったとき、犯人の証拠になる」
私たちは、利恵が口にした「犯人」という言葉の冷たい響きに身震いした。
ウエディングパーティの会場に落ちていた「不吉なメモ」が波紋を呼び……?
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