戦慄の「犯人」予想


花嫁の香澄は、私たちの幼稚園からの幼馴染だ。

幼稚園から大学までの一貫教育という非常にレアな学校で育った私たちは、18年を同じ学園で過ごし、32歳になる今日までもはや親戚のように濃く付き合ってきた。

 

香澄と弓香、利恵と私は部活も吹奏楽部として中高6年間一緒だった。今回、幹事を頼まれたのもその縁。

 

「これってさ、ほら、哲也くんの元カノとかが、香澄を逆恨みしてるってことだよね?」

弓香に同意を求められ、私はうなずいた。

「そうだよね、普通に考えると。悔しくてぶち壊したい、ってことかも? 結婚式はご親族で神社だったから、こっちのパーティが狙われた」

「でもさあ、よく考えてよ。いくら元カレに未練があってもさ、もう入籍してるし、式も挙げたし、今更パーティで騒いでも仕方なくない? そんな人いないと思う」

利恵が反論する。確かにその通り……ドラマじゃあるまいし、無理がある。

「香澄に個人的な恨みがあるんじゃないかと思うのは私だけ? 香澄の仕事の、イメージコンサルタントのライバルとか? 最近売れっ子で、同業者から嫌がらせもあるって言ってた。だって見てよこの赤丸ぐりぐり。もうちょっとで紙が破けるとこだよ。香澄のことが嫌いなひとなんじゃないかと思う」

「人気者の香澄を? 嫌いな人?……うーん、想像つかないな。とにかく、もう会場に戻らないと、さすがに香澄が3人ともいないと気づいちゃう。後半はたっこが余興のMCだから、今のうちに写真とったり食事したりしないと。私、念のために変な人やものがないか、見て来るから」

私たちの中で一番リーダーシップのある弓香が、言うがはやいかきょろきょろしながら受付のほうへ消えていく。私と利恵は、とにかく会場内に戻ることにした。

「……ねえ、こういうときドラマなんかだと、香澄の長年のライバルが犯人だよね。……私、イヤなこと思いついちゃった」
 

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幼馴染のウエディングパーティで見たものとは……?
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