「孤独」と「孤立」の違いと、その健康リスク


山田:医療者は、医療を届けるところまではできます。ですが、ご家族がいない方は、退院後のサポートに繋がりにくいという現実があります。そうした方が、少しでも安心して暮らせるコミュニティを作ることが必要だと考え、ニューヨーク在住の日本人向けのNPO法人を立ち上げ、少しずつ活動を広げていこうと考えています。

 

編集:素晴らしい活動ですね! 私も不測の事態に備え、今から色々と考えておきたいです。

山田:そうですね。突然のケガや事故の時だけではなく、今まで多くの研究で、孤立および孤独が、それぞれ単独で、不安やうつ、認知症、感染症、心筋梗塞などと関連する、と報告されてきました。孤立や孤独は高齢者で問題となりやすいのも事実ですが、若者世代でこそ頻度が高いと報告する調査もあります。

編集:たしかに、私もパンデミックや環境の変化ですごく孤独を感じた時期があったので、納得しました。ちなみに、「孤立」と「孤独」には、どのような違いがあるのでしょうか?

山田:「孤立」とは、客観的に社会的な人間関係が全くない、あるいは希薄な状態を指します。一方で「孤独」は主観的な感情で、自分の期待する人間関係と実態が乖離していていることによる、ネガティブな感情を指します。

編集:なるほど! 私は、「孤独」だったかもしれません。もちろん外出の機会は減ったものの、客観的な人間関係が希薄だったわけではなく、主観的な寂しさを感じていたように思います。

山田:「孤立」と「孤独」は共存することも多いですが、孤立していなくても孤独を感じる場合もあります。また、一見ポジティブに見える入学、転居、出産などのライフイベントも、孤独をもたらすことがあります。

編集:現役世代の方には、こうしたライフイベントが多くありますよね。孤立や孤独は「老後の問題」とせず、今からきちんと理解しておきたいのですが……。具体的には、どうしたらよいのでしょうか?