時間が経てば乗り越えられる、でもその想い出は取っておきたい


――とても切ない話ですが、シルビアさんの役柄から見て、娘夫婦のやり取りはどう映りますか?

シルビア:ふたりのシーンになるとものすごく胸が傷みます。ふたりとも苦しんでいるのは一緒なのに、解決方法や進んでいく方向が違っていて……。乗り越えたいと思っているのは同じだけれども、その方法がベッカとハウイーでは違うからギクシャクしてしまうわけです。

私が演じるナットも大きな喪失を経験しています。だから、結局月日が経てば乗り越え方が違ったとしても、きっと乗り越えられると思ってベッカとハウイーに接するのですが、まだ日が浅いのでどうしても腫れ物に触れるようなってしまう。

傷ついた家族の再生の物語。シルビア・グラブ、リアルに進む会話劇への新たな挑戦【ラビット・ホール】_img3

 

今回のキャラクターだけでなく、誰しもがやはり“失くしたもの”はあって、そのときはすごく辛かったかもしれないけれど、時間が経てば乗り越えられる、でもその想い出は取っておきたい。――その想い出がいずれ良いものになるのか、捨ててしまいたくなるのか、それぞれだと思いますが――。この脚本はそういった繊細なところをとても巧みに描いています。最後、それが分かりやすいハッピーエンドで終わるわけではありませんが、希望というか、光が見える感じになるのも素敵なんです。

 


――映画にも出てきましたが、終盤でナットがベッカと心を通わせながら話す、ナットのセリフが心に残っています。

シルビア:決して押しつけがましくない、そんなセリフですよね。この作品を観て、それぞれがどう感じるかは各々で持ち帰ってください、というのがいいなぁと思うんです。ナットはこう感じたけれど、ベッカに「こうするべきよ」と言うわけでもない。乗り越えるのは、それぞれのタイミングで、それぞれのリズムでいいのよと言われている気がします。ぜひ、劇場で聞いてほしいですね。