「自分を信じる」ことが、明日を少しだけいいものにしていく
フィギュアスケートは選手寿命が短いことでも有名な競技。女子ほどではありませんが、男子も多くは20代で競技生活に別れを告げます。現在24歳の友野選手も残された競技者としてのキャリアはそう長くはないのかもしれません。
これから10代の選手らがどんどん力をつけてくるでしょう。来年、また世界選手権に出られるかは誰も保証できません。
だけど、不思議と友野選手を見ていると、そんな悲観する気持ちがどこかに消え去っていきます。むしろ友野一希の全盛期はここからだと胸がワクワクしてくる。それはきっと友野選手が身につけた「自分を信じる強さ」に、私たちもまた鼓舞されているからではないでしょうか。
人は決して強い生き物ではありません。言い訳もするし、弱音も吐く。人と比べて自分はダメだと劣等感に苛まされたり、傷つくことを恐れて戦う前から白旗を上げたり。大人になればなるほど、やらない理由を見つけることばかり上手くなっていきます。
自分の弱さに逃げ込むのは簡単です。でも、それじゃ未来は開けない。
たとえ最初から才能や環境に恵まれていなかったとしても、努力してきた自分がいるなら、まずはちゃんとそんな自分を信じてみる。自分で自分を安く見積もるのはやめて、今ここにいる自分を誰よりも自分自身が称えてあげる。
あの日、ライバルたちに敗れてなお「自分の弱さではなく、自分の強さと向き合う」と決意した友野選手を見ていると、そんな勇気が湧いてきます。根拠なんてなくていい。デタラメでも、ハッタリでも、まずはそうやって自分を信じてみることが、明日をほんの少しいいものにしていくのかもしれません。
友野選手の演技の最大の見どころは、終盤のコレオシークエンス。失敗も、迷いも、悩みも、コンプレックスも、すべて吹き飛ばすようなスピードで友野選手は氷の上を駆け抜けていきます。その疾走感に、その爽快感に、観る者は幸せな気持ちになるのです。
あんなふうに誰かを笑顔にすることはできなくても、きっと自分にも何かできることがある。私もまた自分の弱さではなく、自分の強さと向き合ってみよう。
友野選手の演技に感動するのは、人生を生きる上で大切なメッセージがそこにつまっているからかもしれないと、万雷の拍手に笑顔で応える彼を見て感じたのでした。
Comment