2023年10月から導入されるインボイス制度。「自分には関係ない話」と思っていませんか? 実は、企業だけの話ではなく、私たちの生活の様々なところに影響を及ぼす可能性があるのです。今注目を集めるキーワードを深堀りする連載「ニュースなことば」、社会派ライターの渥美志保とミモレ編集部の常松がお届けするテーマは「インボイス制度」です。第2回は、インボイス制度導入に伴う事務作業の煩雑さについてです。

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インボイス制度が導入されて「課税事業者」になると、消費税の確定申告が必要になる


アツミ:あの、すごく根本的なことを言ってもいいでしょうか。

常松:はい。

アツミ:フリーランスって、今のこの時期に所得税の確定申告をしますよね(取材時は2月後半)。実は私、これが消費税のインボイス制度とごっちゃになっちゃってたんです。今回はこの辺から、税理士の佐々木さんと、「STOP!インボイス」の小泉さんに、再びお話を伺おうと思います。

佐々木淳一さん1984年生まれ、青森県出身。税理士法人東京南部会計 社員税理士。資格の大原 税理士講座 消費税法 担当講師歴あり

小泉 なつみさん1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。

佐々木:所得税と消費税の申告、ごっちゃになりますよね。そういう人、すごく多いと思います。

アツミ:制度が始まって課税事業者になったら、来年は3月15日までに所得税の確定申告をして、その後、3月31日までに消費税の確定申告をしなければいけない、ってことなんですよね。

佐々木:そうですそうです。

アツミ:それで、ふと思ったんですが。インボイスは「適格 ”請求書”」と呼ばれていますが、一般には適格化(課税事業者の登録番号、税率などの記載がある)された「領収書」「レシート」のことですよね。領収書は所得税の申告に欠かせないあれのことですけど、ここにはインボイス制度は関係ないんですか? つまり所得税の申告は今まで通り「インボイスでない領収書」が使えるけど、消費税では「インボイス」でないとダメってことでしょうか?

佐々木:そのとおりです。

小泉:わかりづらいですよねえ。私も税理士の先生から「それは(所得税の)経費では大丈夫なんですけど、消費税の計算ではダメなんですよ」と何度も言われてたんですが、ちゃんと理解したのは最近です。確定申告2回やるようなものなんて、気が狂いそうじゃないですか。

アツミ:まずは所得税の確定申告で使った領収書を、1枚1枚、これはインボイス、これはインボイスじゃないって分けて、さらにそのインボイスが「ホントに正しいインボイス番号か?」というのも、受け取った側の責任で調べなきゃいけないんですよね。

小泉:そうです。もし虚偽のインボイスが混ざっていたら、受け取った側は仕入税額控除ができないためその分消費税の負担が増えます。でもその前に、制度導入から6年間は激変緩和措置があるので、1万円未満の請求書はインボイスでなくても「仕入税額控除」に入れられます

※2年前の課税売上が1億円以下または1年前の上半期(個人は1~6月)の課税売上が5千万円以下の方が対象

常松:「激変緩和措置」ってなんですか?

佐々木:「激変緩和措置」というのは、導入から6年間だけ、納税の負担を緩和しますというものです。

常松:当面は消費税もちょっとまけてあげるし、手間もちょっとだけ勘弁してあげるよっていう感じでしょうか。どのくらい緩和されるんですか?