日本では容疑者が海外に逃亡できるというのは半ば常識となっており、実際、カルロス・ゴーン容疑者のように脱出を試み成功しているケースがあります。また国外に滞在する特殊詐欺の容疑者を逮捕することが難しかったり、逮捕状が出ている元国会議員が逃亡生活を続けるなど、司法制度がないがしろにされています。

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2022年5月より各地で発生した同一グループによる広域連続強盗事件で、逃亡先のフィリピンから日本へ移送される今村磨人容疑者。写真:AP/アフロ

通常、容疑者が海外に逃亡した場合、犯罪者引き渡し条約に基づいて、国内に身柄を移送できるはずですが、日本の場合、米国と韓国の2カ国しか犯罪者引き渡し条約を結べておらず、事実上、機能していない状況です(先進諸外国は一般的に、数十から百以上の国と条約を結んでおり、日本だけが突出して少ない状態です)。

 

日本が他国と条約を結べない理由として指摘されているのが日本の人権問題です。

日本は死刑制度が存続していることや、勾留中に弁護士の接見が制限されたり、一部のケースで劣悪な環境で拘留が行われるなど、諸外国の一部からは人権が守られていないと批判されています。死刑制度が存在している国でも、他国と多くの条約を結んでいるケースがありますから、死刑制度だけが問題とは考えにくく、日本の人権に対する姿勢全般が障害になっている可能性はそれなりに高いと見てよいでしょう。

「日本は日本」「日本と外国は違う」と国内で勇ましく叫んだところで、冷酷な国際社会では不利なゲームを強いられますから、ガラパゴスな感覚は国益を損ねるだけです。

人権に対する意識の見直しには、私たち国民にも相応の負担が生じます。

日本では野菜やコメなどの農作物を安い価格で入手できますし、飲食店に行けばおいしいメニューを注文することが出来ますが、これも外国人労働者が低賃金で農作業などに従事してくれていたおかげです。

もし実習制度を根本的に見直す、あるいは日本人に相応の賃金を払って仕事をしてもらう、ということになれば、今までと同じ値段では食事を楽しむことは難しくなるでしょう。刑事司法制度についても、諸外国と同じ水準を確保するためには、組織の拡充など、多くの税金が必要となります。

しかしながら、日本は途上国ではありませんから、付加価値が高く、人にやさしい社会を構築できる潜在的な能力があるはずです。むしろ、クオリティの高いものには相応のお金を払う仕組みを積極的に構築しなければ、日本はますます貧しくなるばかりです。高い付加価値を追求することこそが、本当の意味で経済的にも、そして社会的にも豊かな国を作る原動力になると筆者は考えています。

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