老人ホームでトラブルが起こるケース


今回の相談者・みどりさんのご友人の話にあったように、老人ホームにおける性の問題は少なからず存在します。トラブルはそれだけにとどまりません。問題は主に「入居直後」「入居中」「退去時」の3つの場面で起こります。

入居直後のトラブルで多いのは、施設案内などに記載されている金額と実際の請求額が異なるケースまた、職員体制や医療機関との連携が記載とは違うケースです。たとえば、契約書には「訪問診療は週2回、入浴は週3回」と書いてあっても、実際は体制が確保できておらず、蓋を開けてみたら「訪問診療は週1回、入浴は週2回」というのはよくある話。

契約の段階で回数が明記されていたら、現在の状況を確認するようにしてください。お金に関しては、施設案内に記載されている費用以外にいくらかかるのかということも事前に把握しておきましょう。

入居中のトラブルは、他の入居者とのいざこざや事故によるトラブルが大半を占めます。他の入居者と揉めるパターンは、「モノやお金を盗まれた」といったことから異性間の恋愛トラブルまで実にさまざま。老人ホームで色恋?と思うかもしれませんが、認知症が進行すると理性を抑えられなくなってしまうこともあり、それが時にトラブルにつながってしまうことも。ご自身の親がこのような問題を起こしそうであれば、施設側に隠しておかず、あらかじめ入居前に症状を相談して気にかけてもらった方が安心です。

退去時のトラブルは、以前こちらの連載でもご紹介しましたが、入居一時金が返却されないケースが最も多いのではないでしょうか。多額のお金を払ったにもかかわらず、老人ホームが倒産するケースも見受けられます。

有料老人ホームの支払い方法には、全額支払う「全額前払い方式」、一時金を支払う「一部前払い・一部月払い方式」、一時金を支払わない「月払い方式」が選べるので、トラブルを防ぐためには少々割高でも「月払い方式」を選択することをお勧めします。

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具体的にはどんなトラブルが起きる?


では、老人ホームでは具体的にどのようなトラブルが起きているのでしょうか。介護相談員として介護の現場に行くことも多い私・渋澤が、実際に見聞きした話をもとにまとめてみました。

【Case_1】施設案内の月額費用と実際の請求額が大きく違う
施設案内などのパンフレットには月額費用15万円とあったが、実際には23万円請求された──。このようなトラブルを避けるためには、月額費用に含まれるサービス内容をしっかり確認しておいてください。一般的に、月額費用には家賃、管理費、食費、介護保険の1割負担が含まれています。しかし中には、家賃や管理費のみであったり、食事は別途契約という施設も。また、オムツや日用品の金額が加算されている場合もあります。そのため、月額費用の中に含まれるサービス内容の内訳や、その他費用として一般的にどの程度の費用が必要になるのかを事前に確認することが必要です。

【Case_2】入居後すぐにケガをした
高齢になると、転倒による骨折が非常に多く発生します。それは自宅でも外出先でも同じこと。ですが老人ホームに入居後すぐに転倒・骨折してしまったら、「施設なら安心だと思ったのに」と不満に思ってしまうかもしれません。生活上のリスクは自宅も施設も変わらないので、入居前に施設のリスク対応やこれまでの事故事例とその対処法などを確認しておくだけでも気の持ちようが違います。

【Case_3】終身利用と思っていたら退去を求められた
終身で利用できると思っていたのに、入院などを理由にホームを出ていくように言われたことでトラブルに発展することも。老人ホームに入ったら、家族は一生そこで生活できるものだと考えてしまいますが、長期入院や他の入居者とのトラブル等で退去を求められることもあります。退去要件は施設によって異なるので、これまでどのような実例があったのかを入居前にしっかりと確認することが必要です。
 

トラブルが起きた時の相談先


老人ホーム内でトラブルが起きたら、まずは現場の職員や施設長などに直接相談してください。同じ施設に入居している以上、トラブル相手と裁判などで争うよりも、互いに和解を望むケースが多いのは事実です。それでも納得いかず、解決が難しいようであれば、下記の相談窓口に頼ってみてください。

①自治体の介護保険課など施設との話し合いで解決できない場合は、第三者に相談することになります。自治体では、相談や苦情の受付と介護保険施設の指定を行っているため、不適切な対応があれば申告してください。

②各都道府県の国民健康保険団体連合会各都道府県に設置された国民健康保険団体連合会では、介護サービスについての苦情に対応しています。介護サービス事業者に対して調査・指導・助言の権限があるので、トラブル時は適切な助言が期待できます。

③高齢者総合相談センター(シルバー110番)高齢者総合相談センターでは、老人ホームの悩み、介護・医療など、総合的な相談を電話で受け付けています。要介護者の住んでいる地域によって担当のセンターが異なるので、最寄りのセンターはインターネットなどで調べてみてください。

④全国有料老人ホーム協会高齢者が安心して暮らせるよう、全国のホームへの支援や指導を行う非営利団体「全国有料老人ホーム協会」でも第三者目線で相談に乗ってもらえます。
月~金曜日(祝日、年末年始を除く)10:00〜17:00
tel. 03-3548-1077
 

構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

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