「あぁ、この国には人権がないな」と漠然と感じていたのですが、藤田早苗さんの著書『武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別』(集英社)を読むと、そのもやが晴れ、視界がくっきりしていく感じがしました。
国際人権法の法学博士である藤田さんが、国際的な人権基準から見た日本の現状を明らかにする同書。「人権」と聞くとやや抽象的な印象を受ける人もいるかもしれませんが、人間が生活していく上で欠かせない住居が確保される権利や、安全な水や食料を得る権利はもちろん、情報を知る権利、差別されない権利など、人権には様々なものがあります。
「安全な国」日本でも人権問題は起きている
「人権」は国連が様々な基準を設けており、「人種差別撤廃条約」「女性差別撤廃条約」などコアとなる9つの条約のうち、日本も8つを批准しているといいます。「批准」とは内容が決まっている条約に対して、国が行う最終的な確認や同意のこと。「条約は法律に優位すると解されている」ことから、日本も国際人権の基準で法律を運用したり、国内の様々な問題において条約に基づき人権を守る必要があることがわかります。
日本は「安全な国」というイメージがあるかもしれませんが、様々な人権問題があります。例えば、LGBTの人たちが差別されていたり、障害者がまだまだ生きづらい世の中であったり、貧困によってホームレス状態の人がいたり。また、外国から様々な事情で日本に逃れてきた人たちが収容される入管では、度々外国人への非人道的な対応が問題視され、死亡事故も起きています。権力の圧力により、報道機関が忖度し公正な報道がされないことも、国民の知る権利が阻害されるという点で人権問題といえるでしょう。
日本は人権に関する複数の条約に批准していますが、批准したら終わり、何もしなくていいかといえばそんなことはなく、批准した国に対し国連の専門家からなる委員会が調査し、問題があれば勧告をする、という仕組みになっているそうです。
しかし、この本では勧告を受けてもまったく従わず、それどころか逆上する、そもそも調査に協力しない、という日本の実態が克明に記されています。
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