なぜ、こんなことに!?


――なんか緊張するなあ。

翌日の19時、私は五反田駅の改札口前で、卒業アルバムを持って鈴木君を待っていた。

高校卒業以来、15年近くも会っていない。果たして、顔を見てわかるだろうか。昨夜電話を切ったあと心配になり、卒業アルバムをこっそり見ておいた。鈴木くんの写真をみれば、懐かしい気持ちにはなったが、あまり話したことはなかったなと改めて思う。

スマホが振動して、私は急いでタップする。鈴木くんからのショートメッセージが届いていた。

『三国さん、ごめん! 仕事、大トラブル発生。お待たせして申し訳ない。いつまでかかるかわからないから、ちょうど駅に行くところだった後輩の山田を行かせました』

――え!? そっか、大変だな鈴木くん……。って後輩の顔わかんないけども、大丈夫かな?

にわかにそわそわし始めた私に、背後から声がかかる。

「こんばんは! 三国涼香さんですか? あの、僕、鈴木先輩の代理で来た山田と申します」

「あ……初めまして、三国です。こんばんは。取りに来てくださってありがとうございます」

山田と名乗った後輩君は、てっきり会社帰りだからスーツ姿で来ると思っていたが、意外にカジュアルで、黒いパーカーとスウェットを着ていた。

 

そういえば、鈴木君の会社はなんというところなんだろう? 

「これ、鈴木先輩から預かってきました。卒業アルバムをお借りする御礼にって。うちの会社、ワインの輸入なんかもやってて、会社にたくさんあるんですよ!」

 

彼に卒業アルバムなどが入った紙袋を渡そうとすると、両手にぎっしりとワインの瓶が入った紙袋を少し持ち上げて笑った。

「ええ!? そんな、とんでもない。これ10本以上ありますよね? あの、1本で充分です、卒業アルバムをお貸しするだけなんで。それに、持って帰れないので」

私が思わず右手を左右に振ると、山田さんはこともなげに肩をすくめた。

「もちろん、これはマンションまでお届けしますから。鈴木先輩によーく言われてるんです。荷物持ちを全うしろよって」
 

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春の宵、怖いシーンを覗いてみましょう…。
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