答え合わせ


「この辺、春は桜がキレイでしょうねえ」

どうも妙なことになった。私は初対面の山田さんと一緒に、駅から5分ほどの自宅マンションまでの道のりを並んで歩いていた。

「そうなんですよ、このあたり、繁華街かと思ってたけどちょっと歩くと驚くほど静かで……怖いくらいなんで、夜道は警戒して早足で帰ってます。あの、重いですよね、一袋持ちますから」

「大丈夫ですよ。鈴木先輩、本当にアルバム借りられて助かったって言ってましたから。それにしても五反田のマンションに1人暮らしなんて、羨ましいですよ」

私は曖昧に微笑んでいたが、ふと、一つの疑問が湧いてきた。

――そういえば鈴木君……私が五反田に住んでるって、なんで知ってたんだろう? Facenoteには住んでるところが特定できるようなことは載せてないのに……。

同級生の誰かが話した? でも誰が? ……高校の同級生とはSNSでつながっている子もいたが、実際に住んでいる場所は話したことがない気がする。

「へえ、やっぱここ! いいマンションだね」

山田さんの言葉に、びくっとなって立ち止まる。やっぱ。やっぱって何? 

「あの、ワイン運んでくださってありがとうございました。ここでもう大丈夫です。それと……卒業アルバムなんですけど、あの、やっぱり、個人情報とかもあるんで、鈴木君が写ってる部分だけ写真にとって送ってもいいですか?」

頭が混乱して、うまく話を運べない。でも、頭の中でアラートが点滅しているような感覚があった。

……そもそも、この人、本当に「鈴木くんの後輩」? 

突然かかって来た見知らぬ番号。なぜ普段ならでないのに、あの日でたんだっけ? そういえば、宅配便の業者かと思ったんだ。宅配便。そういえば、結局届かなかった。あれは、返送されてしまったかと思ったあの荷物は……通知は。

偽物だったとしたら……? 私は、リンクに名前と……たしか郵便番号を入力した。

「三国さん? これ、重すぎるから部屋の前まで配達しますよ」

にこにこと笑う見知らぬ男。

私は、金縛りのように身動きが取れなくなったまま、次の一手を考えていた。

 
【第19話予告】
憧れのサロンを主宰するマダムには秘密があって……?

春の宵、怖いシーンを覗いてみましょう…。
▼右にスワイプしてください▼

イラスト/Semo
構成/山本理沙

 

前回記事「「命の期限は45分...!?」海外バケーションが一転、恐怖の1日に。極限状況の究極の選択とは」>>