株主に対して自社の商品やサービスなどを提供する株主優待制度を取りやめる企業が増えています。一部の個人投資家を中心に人気のある制度ですが、なぜ、廃止する企業が増えているのでしょうか。

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株主優待制度というのは、株式市場に上場している企業が自社株を購入してくれた株主に対し、自社商品や割引券などを送るというものです。これは日本にしかない独特の制度で、一部の個人投資家は株主優待を重視しており、優待を目当てに企業の株式を購入する投資家も存在していました。

 

通常、企業というのは、得られた利益を所有者(オーナー)である株主に配当という形で還元しますが、株主優待の場合、自社の商品やサービスを提供する形になり、多くの場合、配当として提供される金額よりもお得な内容が設定されています。このため、一部の投資家が優待を目当てにその企業の株を買うという行為が行われており、マネー雑誌などでも株主優待の特集が組まれることがよくありました。

では、なぜここに来て株主優待を取り止める企業が増えているのでしょうか。その理由は公平性と投資家に対する適正な利益還元において優待制度には問題があるからです。

ある企業が年間1000円の配当を実施したと仮定しましょう。同じ企業が自社のサービス券で優待を行う場合、1500円や2000円など、現金として配られる金額より大きな金額が設定されることがほとんどです。どうしてもその商品やサービスが欲しい投資家にとってはお得感がありますが、そのサービスや商品を欲していない投資家との比較では不公平感が出てくることになります。

株式会社というのは基本的に1株の権利は平等というのが大原則ですから、株主間で還元率に違いがあることは原則としてはあってはならず、市場関係者の一部からは否定的な意見が出ていました。

もう1つの理由は株主優待によって自社商品を株主に提供することは、実は株主の損失につながっているからです。

 
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