「社長は俺たちのこと大好きだもんな!」
――所属するボーイズグループのメンバーのみなさんを見ていて、SKY-HIさんが「安心できる居場所を作れているな」と実感できたエピソードはありますか。
SKY-HI BMSGのトレーニー(練習生)で高校生なったばっかりのRUIやTAIKIの話なんですけど、彼らの立場って、本来であれば不安になっちゃう可能性が低くない気がするんですよね。彼らは「THE FIRST」からもう2年くらい参加してくれているので、俺たちは本当にデビューできるのか、とか、社長はもう新しい子たちにしか興味がないんじゃないか、とか。でも、僕を信じて疑わないというか、「社長は俺たちのこと大好きだもんな!」「期待に応えられるように最高のアーティストとしてデビューしよう!」っていうのがビシビシ伝わってくるんですよ(笑)。事実彼らの想像以上に彼らのことが大好きですし、最高の状態で世の中に出て行ってくれると確信していますから。
――絶対的な安心感と信頼感ですね……!
SKY-HI だから彼らは、たとえ新しいトレーニーがいたとしてもすぐに仲良くなるんです。そういえば先日、RUIが高校に入学したので「高校でも色んな経験をして、たくさん学んで頑張ってね」と言ったら、「はい! 色々学んで後輩に受け継いでいきます!」って言っていて。デビュー前からもう後輩のことを気にかけていて微笑ましかったんですが、彼らのいい空気はやはり伝播するもので、この前小学校6年生くらいの子がオーディションの自己紹介の冒頭でこんなことを言ったんです。「この場を作ってくださったスタッフのみなさん、ありがとうございます」って。これは僕が教えたんじゃないんです。メンバーやトレーニー自身が、人に感謝したり、尊重したりするカルチャーを大切にしていたからこそ、短い時間でもそれが伝わったから起こったことだと思っています。
彼らのことは“自分ごと”。だから一緒に悩ませてほしい
――グループのメンバーやトレーニーの方たちが増えて規模感が大きくなっていくことで、SKY-HIさんがマネジメントしなければならない範囲も当然広がりますよね。一人ひとりへの意識が薄まってしまったり、そうしたことへの懸念はありませんか。
SKY-HI 意識が薄まるというのは、考えづらいですかね。人数が増えようと、彼らの一人ひとりの人生がもう他人事じゃないので。自分の人生に対して意識が薄まることって、あまりないじゃないですか。だから、マジで“自分ごと”でしかないです。家で仕事と全然関係ないことをしている時でも、頭のどこかでずっと所属アーティストのことを考えていますよね。誰かに何かあったら、もう一生、気が晴れないだろうなとも思いますし。そんなことを考えすぎたせいか、何度か蕁麻疹に罹ってしまいました(笑)。
ーーそれはお大事になさってください!「マネジメントは孤独」とも言いますが……自分が頑張っている方向が果たして正しいのか? と迷いが生じたり、行き詰まったりすることはないですか。
SKY-HI 僕が考える理想のマネジメントって、マネジメントをしている相手に「今、君のマネジメントに関して行き詰まってるんだけど、どうしたらいいと思う?」って聞ける関係性を築けることだと思うんです。当然、聞かなくても導いてあげられるのがいいんですが、一人で行き詰まってしまうくらいなら「一緒に考えた方が絶対にいい」と思っていて。BE:FIRSTのみんなとは、その状況にすごく近い気がします。ある日の話し合いは喧々諤々の議論になることがわかっていたんですけど、話し合いの冒頭でLEO(BE:FIRST)が、「これから前向きな話をします」ってみんなに伝えたんです。最初にそう伝えるだけで、場の空気が変わるじゃないですか。なんか自分のやり方っぽいなと思って嬉しかったですし、すごく頼もしいなと感じた瞬間でしたね。
もちろん、僕が「こっちの方が絶対いいから、ちょっと頼むわ!」と押し切る時もあります。でも、比較的早い段階から「今ここで悩んでるんだよね」とメンバーに相談する時も多々あって。お互いに「一緒に悩ませてほしい」とオファーし合うコミュニケーションはとても建設的だし、現場の空気もよくなるので、これからも大切にしたいなと思いますね。
『SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー』5月27日(土)、28日(日) [東京] 代々木第一体育館
6月17日(土)、18日(日) [大阪] 大阪城ホール
チケット申込はこちら
<書籍紹介>
『マネジメントのはなし。』
著者:SKY-HI 日経BP 1760円(税込)
オーディション「THE FIRST」で大きなムーブメントを巻き起こし、ボーイズグループBE:FIRSTを誕生させた、マネジメント/レーベル「BMSG」。そんな自らの会社を「スタートアップ」だと位置づけ、音楽業界を根底から変える改革を起こそうとしているのが、SKY-HIさんです。時代の波に乗り遅れた日本の音楽業界で、果たして何を、どこまで変えられるのか――。課題解決、人材育成、スキルアップ、コミュニケーションと、多岐にわたる視点でその可能性を思考していく本書は、BE:FIRSTや同社所属のアーティストファンはもちろん、次世代のマネジメントに求められる「本質」について考えたい人への、ヒントに満ちた一冊です。
撮影/興村憲彦
取材・文/金澤英恵
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