ネットでの炎上は現代では避けたい人災の一つです。誹謗中傷によって、企業の存続や個人の命が脅かされることも少なくなく、数年前には有名人の自殺が社会問題となりました。軽い気持ちでの投稿や拡散行為が、誹謗中傷に加担したとみなされるのを自覚していない人もまだまだ多い現実があります。そんなネットの炎上問題に多く取り組む弁護士が監修した『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』には、ネット炎上やSNSトラブルを解決していく弁護士の姿が描かれます。

事務所に「他人事」という掛け軸を掲げる弁護士・保田理はドライで、依頼者の感情にまっっったく寄り添わないスタンスが持ち味。

 

ある日、彼の無料相談会に訪れたのは、ネットで身に覚えのない誹謗中傷をされて一夜のうちに炎上したセレブブロガー主婦・桐原こずえでした。ネットで電話番号まで晒された、と涙をこぼして言葉に詰まる彼女に保田はバッサリ言います。

 

「所詮は他人事じゃん?」と言う彼ですが、こずえが冷静に状況を話せるようになると詳しい話をはじめます。まずは事実確認と、本人がどうしたいのかが重要なのだと言います。これは、依頼人が現状の問題を「他人事」としてとらえ、感情的にならないことが大事だからです。

 

削除だけでなく、相手を特定する情報開示請求も希望するこずえでしたが、情報開示はお金も時間もかかり精神的にしんどいのだと事実を述べる保田。こずえは一旦帰宅し、彼の言葉を思い返し、今後どうするかを決めるのでした。

 

保田は、相談には共感せず「他人事」として超ドライな対応をしますが、自分の気持ちが定まった依頼人に対しては、真剣に向き合います。

彼女の誹謗中傷をしていたのはどんな人だったのか⋯⋯。個人情報を特定した時のこずえは? 誹謗中傷をした人間の末路とは?
リアルすぎて恐ろしくなるこの主婦ブロガー編のほか芸能人などのネット炎上と情報開示請求のドラマが繰り広げられます。

 

保田が語るネット炎上と弁護士の現実


誹謗中傷する内容をつぶやかなければいいんでしょ? と思っている人は結構世の中に多いのでは。でも、誹謗中傷の投稿をRTするだけでもダメなのです。

 

RTした後に意見や論評したものは別ですが、元の投稿に権利侵害がある場合は同罪になるのです。

ネットで誹謗中傷する人の傾向について聞かれて、あくまで自分の経験した範囲での肌感覚だけど、と前置きをして保田はこう言います。

 

炎上に加担する人間は、高収入で管理職クラスが多いというデータもあるのだそう。世間的には成功者だとみなされても、本人の自己評価が高くて不満を持っているんでしょう、と彼は分析します。

そして、さらっと言ってますが深刻な弁護士の事実も。保田の「他人事」スタンスの理由はここにありました。

 

単に冷酷なわけではなく、自らがしたたかに生き残るための戦術だったのです。

本作はネット炎上させられた者・炎上させた者、双方の現実を描いています。騒動が収まった後もデジタルタトゥーとして残り続けてしまう。「他人事」として割り切って生きてゆくしかないという、炎上させられた者の辛さ。
相手を「他人事」だと思って軽い気持ちで投稿・RTしたら、「自分事」として返ってきた時、炎上させた側の後悔。どちらも日常を不幸にしかさせないのだと、弁護士・保田は教えてくれます。

あなたのその投稿とRT、誰かの不幸を呼ぶものではないでしょうか?

 

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<作品紹介>
『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』
富士屋 カツヒト (著), 左藤 真通 (企画・原案), 清水 陽平(法律事務所アルシエン) (監修)

ネット炎上・SNSトラブルに遭ったことはありますか? 炎上して誹謗中傷の的になってしまった主婦が弁護士の無料相談所へ。出会った弁護士はネット案件に強いがだいぶ変わり者⋯⋯? 誰もが今日にも被害者に、そして加害者になる、現代の闇! 他人事ではいられない誹謗中傷・情報開示請求リアルドラマの幕開けです!

作者プロフィール
原作・左藤真通:

漫画家。著作は『この世界は不完全すぎる』(講談社)、『アイアンバディ』(講談社)、セガサターンエッセイ「第六惑星から」、原作担当として『将棋指す獣』(新潮社)がある。現在、白泉社の電子コミック誌「黒蜜」にて連載の『しょせん他人事ですから 〜とある弁護士の本音の仕事〜』の原作を担当。
Twitterアカウント:@reu_reu_

作画・富士屋カツヒト:
漫画家。著作に『漫画版ボス、俺を使ってくれないか?』『打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。』(白泉社)、『ラブドールズ』(双葉社)がある。現在、白泉社の電子コミック誌「黒蜜」にて連載の『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』の作画を担当。
Twitterアカウント:@huziyakatuhito

監修・清水陽平:
2010年「法律事務所アルシエン」を開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも多い。著書多数。
Twitterアカウント:@shimizu_alcien


(C)左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社
構成/大槻由実子
編集/坂口彩