スクールカウンセラーとは、子どもが学校の悩みを相談できる、教師や親ではない大人の存在。彼らがどんな風に子どもに接しているのか、どんなことを考えて働いているのかを知ることができる『木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架』の1巻が3月16日に発売されています。
非常勤スクールカウンセラーの五加木純架(うこぎ・すみか)は、1週間の内、木曜日だけ学校にいます。
彼女がいる相談室の机に置かれている苗木は、苗字の「五加木」科の「シェフレラ(和名:ヤドリフカノキ)」、花言葉は「実直」「真面目」。相談室に訪れる生徒の「苦しみ」をじっくりと聞き、彼らが笑っていられる毎日をつくるのが彼女の仕事。でも、彼女自身は課題を感じています。
週に一度しか学校にいないスクールカウンセラーを、子どもたちは信頼してくれるのだろうか。彼女は自分の役割を果たすため、行動していました。
相談してもらえる環境づくりのため、密かな努力をする純架
気軽に相談室に来てもらえるよう、学校に来る木曜日、面談予約の入っていない時間には校内を歩き、生徒たちに自分から挨拶をして回ります。驚かれても、変なあだ名で呼ばれてもかまわない、それでスクールカウンセラーがこの学校にいるんだと覚えてもらえるなら。
相談に来た子のため、時に教師に詰め寄って話を聞き出すこともあります。今の学校の先生は激務で生徒一人一人から話を聞くことが十分にできません。純架は、生徒だけでなく教師のことも責めず、ただただ相手の話を聞こうととにかくヒアリングをし、深掘りしていき、生徒の心の底にある問題を明らかにします。
1巻で、彼女の元に来る生徒は、教室でイスを投げて問題になり、担任に言われて相談室に訪れた「プロローグ」の男子生徒・大畑大登(おおはた・ひろと)や、
GW中に学校で禁止されているピアスを開けてきた「ケース1」の石動瑠亜(いするぎ・るあ)の二人。
彼らは「怒り」からくる激しい行動に出ている子たちですが、話をよく聞いてその心をのぞいてみると、傷ついていて「悲しみ」の感情があるのがわかるのです。
心理学では、「怒り」というのは二番目に出てくる第二感情だと言われ、直前に感じる第一感情というのは「悲しみ」「心配」「困っている」状態なのだそうです。これらは、居場所がおびやかされている状態の時に出てくる感情です。
「怒り」を表現している子というのは、少なからず、自分の居場所が何か・誰かによって脅かされていると感じているのではないでしょうか。その怒りをさらに行動に変換させることでしか表現できない……。
教師や親が気付けない、子どもたちの「居場所がないよ」のサインを察知し、話を掘り下げる純架。
「苦しい」を話してもいいんだという経験をしてもらいたいんです
「本音」を聞いてもらえるんだという体験をしてほしいんです
そう言う彼女は、カウンセラーとしてのテクニックを駆使して生徒に対峙しています。
まずは「傾聴」し、相手が気づいたら「共に考える」姿勢へ
純架は、生徒が話をしたくなったタイミングで質問をしていきます。激しい行動をする直前にある気持ちについて、どんな気持ちになるのか、それを感じる状況はいつなのか、気持ちがどう移り変わるのか、を細かく聞きます。
彼女は聴き手に回ることで、生徒に話してもらうことで自分自身で自分の感情に気付いてもらうのです。
生徒自身が自分の感情に気付き、自分が真に望む状態=ゴールもわかった。でも、そこにたどり着くまでにどうしたらいいのか=ゴールまで行く道のりがわからない。そんな時、彼女は初めて言うのです。
この時もですが、純架自身は、その後も感情的にならず一貫してフラットな対応をしています。
子どもが激しい行動に出た時、この純架のスクールカウンセラーとしての対応は、すごく参考になるなぁ⋯⋯と思うのです。子どもの感情に引っ張られるのではなく、まずは受け止めて、それから共に良き方向へ歩いてゆける、純架のような大人が一人でも増えたらいいですね。
『木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架』第1話を試し読み!
▼横にスワイプしてください▼
<作品紹介>
『木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架』
大澄剛 (著)
1週間のうち木曜日だけ学校にいるスクールカウンセラーの五加木純架(うこぎ すみか)。彼女のもとには、暴力、自傷、不登校⋯⋯様々な悩みを抱えた児童がやってくる。小学校の現場で子どもたちが抱えた心の問題との向き合い方を描く、スクールカウンセラー物語。
作者プロフィール
大澄剛
2007年、漫画雑誌「IKKI」(小学館)の新人賞を受賞。『家族ランドマーク』『少年少女ランドマーク』(小学館)、『千代に八千代に』(双葉社)、『このゆびとまれ』などが代表作。現在、「エレガンスイブ」(秋田書店)にて、『木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架』を連載中。
Twitterアカウント:@tposumi
Ⓒ大澄剛(秋田書店)2023
構成/大槻由実子
編集/坂口彩
Comment