世の中に、星の数ほど存在しているマンガ。その一つひとつが誰かによって描き出されてきました。世界を席巻するような話題作もあれば、ひっそりと物語を紡ぎ続ける作品もあります。でも、そんな物語も、もしかしたら誰かを魅了し、心に残っていくこともあるかもしれません。「good!アフタヌーン」で連載され、5月に完結したばかりの『おとなりに銀河』は、とある島で19歳になって初めてマンガに目覚め、上京してきた美しい女性がメインキャラクター。祖母の蔵書にあった少女マンガを通して知った恋の世界が、彼女を後押ししました。でも、彼女にはとある秘密があって――。

『おとなりに銀河』(1) (アフタヌーンKC)


幼い妹と弟を養う、売れないマンガ家の青年。


マンガの現場では、デジタル作画が主流になりつつありますが、アナログで書き続けているマンガ家もいます。少女マンガ雑誌の月刊「anko」で連載中の久我一郎(23)もその一人。高校を卒業してマンガ家デビューを果たしたものの、父が他界。あまり売れてはいないものの、すでに連載を持っていた久我くんは、就職よりもマンガ家の道を選び、その原稿料と父が残したアパートの家賃収入でしっかり者の妹・まちと、物静かな弟・ふみおを養っていくことを決意します。

 

しかし、アナログ作業ができるアシスタントは少なくなってきていて、締め切り近くにピンチに陥っていました。そんな時、担当編集者からアシスタントが見つかったという朗報が入ります。「土地勘がないので迎えに行ってあげてね」と言われ、慌てて家を飛び出す久我くん。待ち合わせの場所に向かうと、そこには黒いワンピースに身を包んだ、美しい女性が佇んでいました。

 

彼女の名前は五色(ごしき)しおり。時間がないので、仕事場に到着し次第すぐに作業を手伝ってもらうことに。背景などを早速描いてもらうと、あまりにも早くてきれいだったので久我くんは驚きます。しかし、五色さんはアシスタント未経験で、昭和の時代に発売された「少女マンガのレッスン」という本で練習しただけとのこと。五色さんのおかげで作業は順調に進みます。

 

夕飯後、再び作業を開始したふたり。五色さんは久我くんの眠気覚ましに自分の話をしはじめます。19歳になるまでマンガを読んだことがなかったこと。祖母の蔵書である少女マンガを読んで、はじめてすれ違いや仲違いから燃え上がる恋の世界を知ったことなど……。その一つが久我くんのマンガだったというのです。

 


締め切りの危機を脱した時、あるアクシデントが!


締め切りまであと8時間のところで、ようやく原稿完成の目処が立ちます。しかし、久我くんは、完成原稿の枚数を数えている時に1枚描き忘れていた原稿があることに気づきます。もう何日も無理をしてきて限界ではあったものの、アシスタントとして来てもらったばかりの五色さんに徹夜を要求するわけにはいきません。そこで、一人でなんとかしようと決意しますが、五色さんが「手伝いが必要ですか?」と手を差し伸べ、その言葉に甘えることにしたのです。

 

それから二人は最後の1枚の作業に取り掛かり、朝、なんとか終えて意識を失うように倒れ込んでいました。ふと久我くんが目を覚ますと、横たわっている五色さんの背中にペンのようなものが刺さっているのが見えました。慌てて取ろうとした時、その物体が久我くんの指に刺さり、なぜか銀河のような幻覚が見えたのです。

 

同じく目を覚ました五色さんは、「…あなたとわたくしの棘が繋がってしまいました」とひとこと。五色さんは「流れ星の民の姫」で、いまの行為が一蓮托生の契を交わしたことになるというのです。久我くんは、ペンが刺さっているように見えたので、それをどうにかしようとしたための行為であって、寝ている他人の身体をこっそり触れようとしたわけではないと全力で否定します。

出会ったばかりの二人ではありますが、既にマンガを通してお互いへの尊敬の念はありました。五色さんはかつて、祖母の蔵書から久我くんのマンガが掲載されている雑誌を見つけ、その雑誌の中で一番簡単そうという理由で模写をはじめました。しかし、なぞっているうちに久我くんがいかに丁寧に描いているかということに気づき、彼の作品が好きになっていきます。一方の久我さんも、アシスタントとして来てもらったばかりではあるものの、五色さんが真面目で丁寧な仕事をすることは気付いていました。

 

棘が刺さって婚姻関係を結んでしまったというのはあくまでアクシデントのため、五色さんは婚姻の無理強いは望んでおらず、「まずはお友達から」と申し出ます。どうする久我くん!?
 

相手を支配する婚姻関係で、二人はどうなっていく?


「流れ星の民の姫」として、親が選んだ人と婚姻することになっていたものの、祖母のマンガから自由な恋や人生の素晴らしさを学び、因襲の多い島を飛び出したという五色さん。彼女は婚姻関係が結ばれてしまった以上は、まずは久我くんとの恋愛を目指そうと考えますが、久我くんはただただ戸惑うばかり。さらには、その契りには不思議な力があり、五色さんと一定以上の距離が離れたり、彼女の意に沿わないことをしたりすると、罰として久我くんが謎の体調不良に襲われます。その現象を体験して、ようやく久我くんは五色さんの言うことを信じざるを得なくなります。

突然、アシスタント希望者が婚約者になってしまった久我さんですが、五色さんが「流れ星の民の姫」であるがゆえに、強い契約で婚約者に強い負担を強いる彼女こそ辛いのではないかと優しい気遣いを見せます。そんな久我さんに、五色さんは惹かれていくようになりますし、久我くんもまた、どこまでもまっすぐで新しいことに目を輝かせる五色さんのことが気になっていきます。そして二人とも恋愛初心者なので、まさに五色さんが憧れてきた少女マンガの恋の物語のような、初々しさやときめきに満ちた出来事を少しずつ重ねていくことになります。

今年4月からはアニメとドラマが同時スタート! 待望の最終巻である6巻は7/6(金)に発売予定。すでにこれらをチェックしている人も多いのではないでしょうか? 1ヵ月限定で1巻まるごと試し読みできるので、婚約から始まる、やさしい恋の物語をぜひマンガでも堪能してみて。

 

【漫画】『おとなりに銀河』第1話を試し読み!
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『おとなりに銀河』
雨隠ギド 講談社

『甘々と稲妻』の雨隠ギド、待望の新連載は謎めき&ときめきの婚約ラブコメ!! 幼い妹弟を養うため、売れない漫画家業に精を出す久我くん(23)。 ハイパー苦労人な彼の元にやってきたのは、敏腕&美貌の神アシスタント・五色さん。 だが、出会ったその日に「わたしは、とある王族の姫。 あなたと婚姻関係の契りが結ばれた」と宣言されてしまう──! 恋愛初心者の2人の、“契約”から始まる新婚ラブコメ、ほんわか開幕!