「料理をした人だけの特権」を楽しむことで、日々の料理作りが続く!
稲田:今井さんの本の中にもチラチラと出てきていましたが、今井さんでも自分の料理に飽きる瞬間があるんだな、と。僕、基本的には常に「自分が作る飯うめぇな! って思うんですけど(笑)、なぜか突然「今日はもう自分が作ったもの、食べたくない」みたいなのがやってくることがあるんですよ。
今井:あれ、なんなんでしょうね。作るのは楽しめても、食べるのを楽しめない瞬間ってありますよね。それなのに、翌日は普通に戻っていたり。
稲田:そういうときって、今井さんの本の中にあったような、前日に煮たワラサ(小さめのブリ)のアラの身や内臓をほぐして、思いつきのパスタを作ったりとか、自分がおいしいって思えるものを自分のためだけに作ると、なんだかイキイキしてきますよね。「このレシピをちゃんと作らなきゃ」とか、「家族のために」とか、「誰かを喜ばせたい』」ていうのも、もちろん楽しいし、大切だし、おいしいんだけど、 そういうものから、フーッと全部解き放たれて、残り物をなんとかするために、自分だけが責任を負う、みたいなやつ。
今井:時間にも、栄養にも追われない料理って解放感がありますよね。
稲田:それでいうと、僕、今井さんの本にあった「秘密のバター牛しゃぶ」が最高に好きで。これ何かっていうと、家族のために牛肉を使った炒め物を作るんですけど、その前に、バターでニンニクを炒めたところに醤油を入れてジュッと焦がして、自分用によけておいた牛肉をそのバターの中でしゃぶしゃぶするというもの。台所に立ったまま、家族に見つからないように3枚くらい食べて満足したら、おもむろに残りの材料を入れて、本来の炒め物を作るんですよね(笑)。
今井:家族全員にそんなのを作ったら、どれだけ油脂使うんだってことになりますし。体にも悪いんで、私が代表して食べておきます、みたいな(笑)。すき焼きを作るときでも、先に牛肉を数枚、塩か醤油で炒めて食べないと、気が済まないんですよね。
稲田:わかります! 僕もね、似たようなことをやるときって、やっぱり牛肉なんですよ。あまり火を入れない赤い部分がいっぱい残った牛肉っておいしいじゃないですか。でも家族、ましてや小さな子どもには、親としてこんなの食べさせられない。だけど自分で食べるだけなら自己責任ですし。
今井:そういう、些細だけど料理を作る人だけの特権みたいなことを楽しめると、毎日の料理も続くようになりますよね!
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