作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。その赤裸々な声は、まさに「事実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の夫婦問題を浮き彫りにします。
今回お話を伺うのは、真面目に子育てと仕事にとりくむうちに、次第に夫への興味がなくなってしまった女性。「このまま、こういう結婚生活を送るんだろうな」と諦めはじめた矢先、家族に事件が発生。小学校に上がった娘に異変が起こり……。
剛さん(仮名): 50歳、専門商社に勤務。
パワーカップルの盲点
「結婚したのはちょうど20年前。その頃は、バリバリ2人で働いて、充実した生活を送る人生をイメージしていました。私は新卒で広告代理店に入社し、6年後に独立。夫と交際を始めたのはその頃でした。当時は1人代理店状態で、PRを請け負ったり、イベントを取り仕切ったり、MCとして人前に出ることも多かったですね。
毎日のテンションが高くて、頑張った分成果が出るサイクルでした。夫(剛さん・仮名)は専門商社でかなりの激務。とにかく20代、30代は仕事を頑張ろうという2人でした」
お話を伺う限り意識の高いパワーカップルですが、取材で目の前に座る愛佳さんからはその当時の様子が想像できません。穏やかでおっとりしたお話しぶり、服装もナチュラルテイストの愛佳さん。20年の間にさまざまな変遷があったことが想像できます。
愛佳さんと剛さんは、結婚後しばらく終電で帰宅するような生活が続きましたが、同志という雰囲気で仕事に没頭していたといいます。しかしバランスが変わる日が訪れました。妊娠・出産です。喜ばしい出来事は、愛佳さんの「人生の勢い」をあまりにも大きく変えることになります。
「母となるならば、それを覚悟して出産するべき。きっとそうなんだと思います。でも簡単じゃなかった。赤ちゃんが出来たことは嬉しくて、いいお母さんになろう! と強く思いました。ちょっと強く思いすぎてしまった。さながら、新しいプロジェクトに臨むビジネスマンのようだったと思います……」
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