「こういう生き方いいな」って憧れる女性が開いてくれた道をいま、私が歩いてる


作品の中で小泉さんの心を最も強くとらえた言葉「よりよく生きよ、むすめたち」は、そうした思いにも繋がっています。これは登場人物の一人が少女時代に何気なくしたためた詩の一節。かつて生き生きとした生命力の塊だった自分とピエタの少女たちへの祝福であると同時に、年齢を重ねた今もそんな自分になれると勇気づける「過去からのエール」でもあります。何の変哲もない、でも祝福された人生を生きる10人の女性たちは、物語の中で作曲家ヴィヴァルディの音楽によって結ばれ、それを次世代にも響かせることで、後に続く女性たちに祝福をも引き継いでゆきます。

「年齢を重ね、平気で『老けた』と傷つけられる」小泉今日子が下の世代のために道を整える理由_img3

 

小泉:私にも「こういう生き方いいな」って憧れる女性がいっぱいいて、そういう人たちが開いてくれた道を今、歩いていると思うんです。だから私も、そこを歩きながら、「あ、ここに街灯一個つけとこうかな」みたいなことができれば。よく考えたら、私が子供の頃は、まだ女性は外ではあんまり働く場所がないぐらいの社会状況だったし、日本の女性が選挙権を得たのだって戦後ですよね。そこから70年とかで、先輩たちがちょっとずつ道を作り、歩きやすいように舗装していってくれた。私たちはその途中にいるし、私たちの先には若い世代がいる。だから今、それぞれが勇気を出して一歩進んでいけば、いつの時代も、よりよい道になるんじゃないかと。よりよく生きるって、そういうことなのかもしれません。

 

前編
「「子供を持たない人生を生きるんだろうな」と少し心が痛かった頃。小泉今日子を幸せにした少女時代の記憶」>>

INFORMATION
舞台「ピエタ」

少女だったことがある、全ての女性に捧ぐ–––
小泉今日子、念願の小説『ピエタ』舞台化。2023年夏、ついに実現。

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<STORY>
18世紀、爛熟期を迎えた水の都ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児を養育するピエタ慈善院で〈合奏・合唱の娘たち〉を指導していた。時は経ち、かつての教え子エミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。そして一枚の楽譜の謎に、ヴィヴァルディに縁のある女性たちが導かれていく――。ピエタで育ちピエタで働くエミーリア、貴族の娘ヴェロニカ、高級娼婦のクラウディア……清廉で高潔な魂を持った女性たちの、身分や立場を超えた交流と絆を描く。運命に弄ばれながらも、ささやかな幸せを探し続ける女性たちの物語。


原作:大島真寿美「ピエタ」(ポプラ社)
脚本・演出:ペヤンヌマキ
音楽監督:向島ゆり子
プロデューサー:小泉今日子
出演者:小泉今日子 石田ひかり 峯村リエ / 広岡由里子 伊勢志摩 橋本朗子 高野ゆらこ
/ 向島ゆり子 会田桃子 江藤直子

撮影/榊原裕一
取材・文/渥美志保
構成/坂口彩

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